一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

R5: 地球外物質

2019年9月20日(金) 14:00 〜 16:30 大講義室 Ib (大講義室)

座長:橘 省吾、松本 恵

15:45 〜 16:00

[R5-19] NWA 7203アングライトの特異な岩石組織の結晶化過程

「発表賞エントリー」

*林 秀幸1、三河内 岳2、Bizzarro Martin3 (1. 東大・院理、2. 東大・総研博、3. コペンハーゲン大)

キーワード:NWA 7203、アングライト、結晶化過程、外来結晶

アングライトは太陽系最古の原始惑星地殻由来隕石の一種で、アルカリ元素に枯渇し難揮発性元素に富み、特異な鉱物組み合わせを示す。NWA 7203は急冷組織を示すアングライト隕石であり、粒子サイズが大きく変化する特異な岩石組織を示すが、詳しい結晶化過程は明らかになっていない。NWA 7203は粒子サイズが1マイクロメートル程度から100マイクロメートル以上に変化する樹枝状組織を示し、細粒部から粗粒部に広がる放射状組織を持つ。バルク組成は、粗粒部は細粒部に比べ、わずかにMgに富みFeに乏しい組成であった。ただし、誤差範囲内でバルク組成は一致している可能性も否定できない。細粒部にのみ、Mgに富むカンラン石が見られ(最大Fo64)、外来結晶と考えた。このカンラン石を核にし、灰長石が成長している様子も見られた。NWA 7203の結晶化過程は、まずカンラン石外来結晶を核に細粒部が結晶化し、次に周囲のメルト組成がMgに富むよう変化し、最後に粗粒部が結晶化した。また、バルク組成が細粒部と粗粒部で同じだったならば、細粒部と粗粒部の組織の違いは、単純に冷却速度の鈍化により起こされた可能性が考えられる。