一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

R8: 変成岩とテクトニクス

2019年9月20日(金) 14:00 〜 16:30 A-117 (イースト1号館)

座長:遠藤 俊祐、中村 佳博

15:45 〜 16:00

[R8-08] Impure metachertによる物質輸送ー沈み込み帯の物質循環への新たな連結環

*薮田 渉1、平島 崇男1 (1. 京大・院理学)

キーワード:沈み込み帯、珪質片岩、深部流体、物質移動

熊本県八代地域の黒瀬川帯中のローソン石青色片岩相変成作用を被った箱石サブユニット(Sato et al., 2016)に産する珪質片岩を用い、沈み込み帯における物質輸送能力を評価することを目的に、含有鉱物の化学分析および、モード組成の測定を行った。当該珪質片岩は、かつて種山鉱山として知られ、マンガンと鉄に富むものである。水の輸送能力については、重量比10%の水を湛える、含マンガンローソン石によるものが顕著であり、 一試料においては全岩でも3%を超える含水量が認められた。一方の酸素輸送では、赤鉄鉱にはエクロジャイト比で500倍以上の酸素輸送力が確認された(Malaspina et al., 2012)。これらの事実は、珪質片岩が沈み込み帯において、これまで想定されてこなかった形でスラブ-マントル間の物質移動を可能にし、地球表層部と深部の物質循環の図式を補完し、酸素沈み込みという新たな地平を開拓するものとなりうると考える。