一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

S1: 火成作用の物質科学 (スペシャルセッション)

2019年9月20日(金) 10:00 〜 12:00 A-117 (イースト1号館)

座長:松本 恵子、無盡 真弓、浜田 盛久

10:00 〜 10:15

[S1-01] 一ノ目潟産スピネルカンラン岩捕獲岩の圧力推定による島弧域リソスフェア-アセノスフェア境界領域の復元

「発表賞エントリー」

*佐藤 侑人1、小澤 一仁1 (1. 東京大学・院理・地球惑星)

キーワード:リソスフェア-アセノスフェア境界、圧力推定、スピネルカンラン岩捕獲岩、含水ソリダス

東北日本弧下のリソスフェア-アセノスフェア境界領域(LABZ)を、一ノ目潟産スピネルカンラン岩捕獲岩の圧力推定に基づき復元した。9つの捕獲岩から噴出直前の平衡組成を特定し、地質温度圧力計の小さな圧力依存性を活用して圧力推定を実現した。圧力範囲は0.7-1.6 GPa、温度範囲は830-1080 °Cで、地温勾配は~290 K/GPaとなった。角閃石を含み・弱変形かつ粗粒な・斜長石カンラン岩からなる浅部領域(28-32 km)がメルトを含み・斜長石および角閃石を含まず・強変形かつ細粒の・スピネルカンラン岩からなる深部領域(41-55 km)に重なる層構造が復元された。変形微細構造と組成累帯構造の関係から~40 km以浅がリソスフェアでそれ以深がLABZだと判断できる。計算した地震波異方性や地震波速度の深さ変化は、地震学的LABがLABZにあることを支持する。強変形とメルトの出現深度の一致は、島弧のLABが含水カンラン岩のソリダスに支配されることを示唆する。これを東北日本弧の地球物理観測によるウェッジマントルの熱構造と比較して、LABが背弧から火山弧にかけ浅くなることを明らかにした。