一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

S1: 火成作用の物質科学 (スペシャルセッション)

2019年9月20日(金) 10:00 〜 12:00 A-117 (イースト1号館)

座長:松本 恵子、無盡 真弓、浜田 盛久

10:30 〜 10:45

[S1-03] 完晶質な複合岩脈を用いたメルト中の拡散継続時間推定

「発表賞エントリー」

*山崎 あゆ1、河上 哲生1、東野 文子2 (1. 京都大・院理、2. 岡山理大)

キーワード:元素拡散、タイムスケール、完晶質岩、複合岩脈、マグマ混合

領家変成帯高温部に産する,完晶質な複合岩脈中の鉱物化学組成分析から拡散プロファイルを求め,マグマ混合過程における拡散継続時間の推定を試みた.複合岩脈中の珪長質岩と中間質岩の境界部分に注目し,鉱物化学組成分析を行った.その結果,岩相境界から約1.5cm以内の珪長質岩側において,境界からの距離とともに,黒雲母のMgO濃度や細粒斜長石リムのCaO濃度が低下するプロファイルを得た.これらの濃度プロファイルは,拡散方程式の解でよく近似できる(R2>0.8)ことから,元素拡散の結果形成されたと考えられる.また,本研究で得たCaとMgの拡散プロファイルがほぼ同じ拡散距離を示すことや,中間質岩と珪長質岩中で非対称な拡散プロファイルを示すため,マグマ混合過程においてメルト中で生じた拡散が鉱物組成に反映されたと考えた.これを踏まえ,推定される珪長質メルト中のMg拡散係数と拡散距離から,任意の温度での拡散継続時間を推定した.更に,Hbl-Pl温度計から,中間質岩の固結時の温度を約750℃と見積もり,珪長質メルト中での拡散はより高温で起きたと考えた.以上の情報から,拡散継続時間を<104年と推定した.