一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

S1: 火成作用の物質科学 (スペシャルセッション)

2019年9月20日(金) 10:00 〜 12:00 A-117 (イースト1号館)

座長:松本 恵子、無盡 真弓、浜田 盛久

11:15 〜 11:30

[S1-06] 火山ガラスの色調の要因:新燃岳2018年噴火火山灰の例

*松本 恵子1 (1. 産総研,活断層・火山研究部門)

キーワード:火山ガラス、色、新燃岳、ラマン分光分析

火山噴火プロセスにおける火山ガラス着色メカニズムを明らかにするため,新燃岳2018年3月噴火火山灰について石基ガラスのラマン分光分析を行った.3月1日–4月5日噴火の火山灰の大部分が実体顕微鏡下で黒色不透明粒子であるなか,3月6–7日の火山灰には淡色と黒色の透明粒子が特徴的に含まれていた.3月6–7日の黒色透明粒子と4月5日の黒色不透明粒子には690 cm-1付近に鉄酸化物ナノライトの晶出を示すピークが認められたのに対し,3月6–7日の淡色透明粒子には見られなかった.鉄酸化物ナノライトの晶出によりメルト粘性は急上昇することから,黒色の石基ガラスは比較的高い,淡色は比較的低いマグマ粘性を示すと考えられる.もしそうならば,前者は溶岩として流出したマグマに,後者は停滞することなく軽石として次々と放出されたマグマに由来する粒子と考えると,3月6–7日に両噴火様式が同時に観察されたことと整合的である.噴出物の色調の形成メカニズムが明らかになれば,可視光観察に基づく火山活動の物質科学的モニタリングに繋がる.