一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

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S1: 火成作用の物質科学 (スペシャルセッション)

2019年9月20日(金) 09:30 〜 17:00 A-プレゼンスペース (イースト1号館)

09:30 〜 17:00

[S1P-01] なぜマントル捕獲岩中の流体包有物は鉱物種やサイズに依存して異なる残留圧力を持つのか?

*萩原 雄貴1、山本 順司2 (1. 北海道大・院理、2. 北海道大・総博)

キーワード:流体包有物、ラマン分光分析、地質圧力計、マントル捕獲岩、二酸化炭素

流体・メルト包有物のCO2濃度や密度はマグマ供給系や,岩石の由来深度,噴火前のマグマの揮発性成分濃度の推定に利用されてきた.包有物がホスト鉱物に捕捉された時の初期情報は弾塑性変形や脆性破壊,流体の拡散,流体とホスト鉱物間の反応などにより,地表への露出過程や実験中に上書きされてしまう可能性がある.
そこで本研究では,包有物からマントル流体の情報をより正確に復元するために,マントル捕獲岩中の流体包有物の残留圧力を測定し,ホスト鉱物種や包有物の径との関係を調査した.その結果以下の3つの知見を得た.
1) スピネル>直方輝石=単斜輝石>かんらん石の順で高い流体圧を保持している.
2) スピネル・単斜輝石・直方輝石の流体圧は包有物の径が小さい程低圧になる.
3) 逆に,かんらん石の流体圧は包有物の径が小さい程高圧になる.
これらの傾向は,包有物―ホスト鉱物系の熱弾性平衡や脆性破壊のモデルでは完全に説明できない.従って,岩石の露出過程で塑性変形や流体の拡散により流体圧に関する初期情報は上書きされている.