一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

S2: 岩石-水相互作用 (スペシャルセッション)

2019年9月20日(金) 15:30 〜 17:00 大講義室 Ia (大講義室)

座長:土屋 範芳、河上 哲生

16:45 〜 17:00

[S2-06] 超臨界流通式水熱実験による玄武岩-海水系の元素の選択的溶脱に伴う変質過程

「発表賞エントリー」

*根津 勇介1、岡本 敦1、平野 伸夫1、宇野 正起1、土屋 範芳1 (1. 東北大・院環境)

キーワード:玄武岩-海水相互作用、超臨界流体、流通式実験

本研究では海洋底熱水循環系のような開放系かつ超臨界条件での元素の移動と、変質作用の反応過程を明らかにするため、超臨界条件下で玄武岩-海水系の流通式実験を行った。実験条件はIDDP2の深部の超臨界環境かつ、溶存種の平衡解析が可能な400 ℃、38 MPaで、実験は2 - 6日間行った。岩石はアイスランド玄武岩、流体は海水および蒸留水、塩水を用いた。海水実験では、反応容器の入口で海水から石膏が析出し、pHの著しい低下が見られた。6日間の実験で岩石の約50 wt%は緑泥石となった。顕著な緑泥石の生成が見られたのは、pHが低下した海水に対し単斜輝石と斜長石の溶解が非常に速く進んだためだと考えられる。また、上流で溶脱した鉄が、下流において鉄酸化物として再沈殿していた。一方で、蒸留水と塩水の実験においては、斜長石のSi、Al、Naが選択的に溶脱し、灰長石に置換され、単斜輝石はあまり反応しなかった。これらの実験結果は、玄武岩-海水の反応は、塩水、蒸留水の場合と大きく異なることを示しており、この違いは海水中の溶存種に関連するpH変化とそれに伴う鉱物の溶解速度の変化によって生じたと考えられる。