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[R6-06] 関門層群の年代の再検討:残された未解決問題
キーワード:関門層群、砕屑性、ジルコン年代、砂岩、凝灰岩
日本列島の白亜紀整然層の堆積場は,前弧・弧内・背弧盆地の3種類に分類される.前弧堆積物は主に海成層からなり,示準化石や放散虫化石等による精密な対比が可能である.一方,弧内・背弧盆地の陸成層については,対比精度が劣る非海棲生物化石と凝灰岩・火山岩の放射年代のみが年代推定手段だった.近年,ジルコン U-Pb 年代測定の精度が向上し,凝灰岩の噴出・堆積年代の決定(例:Hirayama et al., 2021; Kusuhashi et al., 2013)のみならず,砕屑性ジルコンを用いた後背地推定(例:Vermeesch, 2004)や年代制限(例:Dickinson & Gehrels, 2009)が可能となった.
西南日本の弧内堆積物は,九州北部から中国山地中央部に分布しており,特に関門層群は多くの研究がある.砕屑性ジルコン年代測定も行われた(Aoki et al., 2014)が,測定粒数が少なく統計的に有用(Vermeesch, 2004)とは言い難い.そこで,新たに砕屑性ジルコン年代の測定と検証を行った.測定結果と過去のジルコン年代データを表および図(A)に示す.なお,一部はAoki et al. (2014)と同一の試料を用いた.
下関亜層群の以前のデータは,堆積上限年代が層序学的に逆転したように見えていたが,おそらく測定数不足が原因だったと思われる.新たに得たYC1σは筋ヶ浜層で97 Ma,塩浜層で101 Maであり,下関亜層群最上部の堆積年代は,以前の見積(アルビアン後期)より若く,セノマニアン以降と考えられる.貫入する香春花崗岩の年代(94.8 ± 0.9 Ma;堤・谷, 2022)を併せて考慮すると,同亜層群の上限はセノマニアンに限定される.一方,脇野亜層群最下部の千石層のYC1σは128 Maであり,吉母層の130 Maと近い値を示した.この結果より,従来推定された通り千石層は吉母層の同時異相であると思われるが,堆積年代はより若いバレミアン以降と考えられる(図B).
一方で,矛盾点も顕わになった.北彦島層の「凝灰岩の年代」は106.3 ± 1.0 Ma(Miyazaki et al., 2019)で,下位の塩浜層のYC1σより有意に古い.しかしながら,凝灰岩は砕屑性ジルコンの影響が大きい場合が少なく無い(例:Tsutsumi et al., 2017).北彦島層のデータを砕屑性として扱うとYC1σは99.3 ± 1.3 Maとなり,矛盾は解消される.もう一つの矛盾は,「下部若宮層が若すぎる」点にある.熊谷層(上部若宮層相当)の凝灰岩の年代が111.8 ± 1.3 Ma(Miyazaki et al., 2019),砂岩のYC1σが114 Maであり,この2つの年代は調和的である.しかし,下部若宮層のYC1σは106 Ma(データはAoki et al., 2014より)と,有意に若い年代を示す.この矛盾を検証および解消するには,広域的かつ測定地点数を増やした追加調査が必要である.
Aoki et al. (2014) Terra Nova, 26, 139-149.; Dickinson & Gehrels (2009) EPSL 288, 115-125.; Hirayama et al. (2021) Int. J. Paleobiol. Paleontol., 4, 000122.; Imaoka et al. (1993) J. Min. Petr. Econ. Geol. 88, 265-271.; Kusuhashi et al. (2013) Proc. Royal Soc. B 280, 20130142.; 松本ほか (1982) 化石 31, 1-26.; 松浦 (1998) 岩鉱 93, 307-312.; Miyazaki et al. (2019) Int. Geol. Rev. 61, 649-674.; Tsuysumi et al. (2017) Island Arc 26, e12194.; 堤・谷 (2022) 地質学会要旨 129, T6-O-5.; Vermeesch (2004) EPSL 224, 441-451.
西南日本の弧内堆積物は,九州北部から中国山地中央部に分布しており,特に関門層群は多くの研究がある.砕屑性ジルコン年代測定も行われた(Aoki et al., 2014)が,測定粒数が少なく統計的に有用(Vermeesch, 2004)とは言い難い.そこで,新たに砕屑性ジルコン年代の測定と検証を行った.測定結果と過去のジルコン年代データを表および図(A)に示す.なお,一部はAoki et al. (2014)と同一の試料を用いた.
下関亜層群の以前のデータは,堆積上限年代が層序学的に逆転したように見えていたが,おそらく測定数不足が原因だったと思われる.新たに得たYC1σは筋ヶ浜層で97 Ma,塩浜層で101 Maであり,下関亜層群最上部の堆積年代は,以前の見積(アルビアン後期)より若く,セノマニアン以降と考えられる.貫入する香春花崗岩の年代(94.8 ± 0.9 Ma;堤・谷, 2022)を併せて考慮すると,同亜層群の上限はセノマニアンに限定される.一方,脇野亜層群最下部の千石層のYC1σは128 Maであり,吉母層の130 Maと近い値を示した.この結果より,従来推定された通り千石層は吉母層の同時異相であると思われるが,堆積年代はより若いバレミアン以降と考えられる(図B).
一方で,矛盾点も顕わになった.北彦島層の「凝灰岩の年代」は106.3 ± 1.0 Ma(Miyazaki et al., 2019)で,下位の塩浜層のYC1σより有意に古い.しかしながら,凝灰岩は砕屑性ジルコンの影響が大きい場合が少なく無い(例:Tsutsumi et al., 2017).北彦島層のデータを砕屑性として扱うとYC1σは99.3 ± 1.3 Maとなり,矛盾は解消される.もう一つの矛盾は,「下部若宮層が若すぎる」点にある.熊谷層(上部若宮層相当)の凝灰岩の年代が111.8 ± 1.3 Ma(Miyazaki et al., 2019),砂岩のYC1σが114 Maであり,この2つの年代は調和的である.しかし,下部若宮層のYC1σは106 Ma(データはAoki et al., 2014より)と,有意に若い年代を示す.この矛盾を検証および解消するには,広域的かつ測定地点数を増やした追加調査が必要である.
Aoki et al. (2014) Terra Nova, 26, 139-149.; Dickinson & Gehrels (2009) EPSL 288, 115-125.; Hirayama et al. (2021) Int. J. Paleobiol. Paleontol., 4, 000122.; Imaoka et al. (1993) J. Min. Petr. Econ. Geol. 88, 265-271.; Kusuhashi et al. (2013) Proc. Royal Soc. B 280, 20130142.; 松本ほか (1982) 化石 31, 1-26.; 松浦 (1998) 岩鉱 93, 307-312.; Miyazaki et al. (2019) Int. Geol. Rev. 61, 649-674.; Tsuysumi et al. (2017) Island Arc 26, e12194.; 堤・谷 (2022) 地質学会要旨 129, T6-O-5.; Vermeesch (2004) EPSL 224, 441-451.