12:30 〜 14:00
[R6-P-03] 九重火山群火山岩類の岩石学的・地球化学的研究
「発表賞エントリー」
キーワード:鉱物モード組成、九重、島弧マグマ
南日本弧と琉球弧の第四紀火山の活動は南海トラフと琉球海溝で沈み込むフィリピン海プレートに関連する。フィリピン海プレートは九州‐パラオ海嶺北東 側では四国海盆で生じた若い(26~15 Ma)海洋地殻が、南西 側ではより古い(60~40 Ma)西フィリピン海盆由来の海洋地殻が沈み込んでいる(Mahony et al., 2011)。およそ25 Maより若いスラブは部分溶融しマグマを生成し、より古いスラブは脱水流体をマントルに付加することでマグマを発生させるとされるので (Defant & Drummond, 1990)、西南日本弧と琉球弧ではマグマの成因は異なると考えられている (Mahony et al., 2011; Shibata et al., 2014) 。九州のテクトニクスを理解する上で、この西南日本弧と琉球弧の境界となる九州‐パラオ海嶺の延長の決定は重要であるが、Mahoney et al. (2011) はそれが阿蘇火山直下にあるとし,Shibata et al. (2014) は阿蘇と霧島火山はフィリピン海プレートと九州‐パラオ海嶺の境界付近に位置すると考えた。
九重火山群はMahoney et al. (2011)やShibata et al. (2014)の主張によると、西南日本弧の最西南端に位置する第四紀火山であり、それ以西には九州‐パラオ海嶺の延長上に位置する可能性のある阿蘇火山が位置するため、西南日本弧と琉球弧境界を議論する上で重要な火山である。川辺ほか (2015) によると、その活動は4つの活動期(第1期~第4期)に分けられ、石英とカンラン 石の共存などの非平衡な鉱物組み合わせなどから苦鉄質と珪長質なマグマの混合が起きていたと考えられている。本研究では九重火山群のほぼすべてのフローユニットから採取した火山岩類の鉱物モード・主成分化学組成と微量元素組成(Rb, Ba, Sr, Nb, Zr, Y濃度)を測定し、マグマの進化過程を議論することを目的とした。
本研究で測定した火山岩類のモード組成をカンラン 石(Ol)、直方輝石(Opx)、そして角閃石(Hbl)モード組成の三角ダイアグラムとして図に示した。この図上で各火山岩類は辺Ol-Opx上のグループと辺Hbl-Opx上のグループに2分される。我々はこれらをOpx含有量40%を基準に、それぞれ細分化し、九重火山群の火山岩類を、(1)Olに富むグループ(Ol-rich)、(2)Hblに富むグループ(Hbl-rich)、(3)Opxに富みカンラン石を含むグループ(Opx-rich)、(4)OpxとHblがともに富むグループ(Opx・Hbl-rich)に分類した。さらに、これら試料のSiO2とK2O含有量に基づき、Ol-richはOl-rich1とOl-rich2に、 Hbl-richをHbl-rich1とHbl-rich2 にそれぞれ細分化し、九重火山群の火山岩類を6グループに分類した。
鉱物モード組成に基づいて分類した6グループと主成分化学組成を比較すると、Ol-rich1、2が玄武岩質安山岩組成、Opx-rich、Opx・Hbl-rich、Hbl-rich2は安山岩組成、Hbl-rich1は安山岩からデイサイト組成を示す。また、TiO2含有量はSiO2含有量の増加に伴いSiO2含有量が約58 (wt. %) までは増加傾向を示すが、その後減少に転じるため、九重火山群下のマグマは苦鉄質端成分と珪長質端成分の単純な2端成分混合だけでは説明できない可能性が考えられる。微量元素組成では、LILE (large-ion lithophile elements) に比べHFSE (high field strength elements) が枯渇する典型的な島弧マグマの特徴を示す。本講演では、鉱物モード組成に基づいて分類した6グループに様々な地球化学的特徴の違いがみられたため、主成分元素組成と微量元素組成を用いて、その違いを解説し、それぞれのグループはどのようなマグマの進化過程を経験し噴出したのか議論する。
九重火山群はMahoney et al. (2011)やShibata et al. (2014)の主張によると、西南日本弧の最西南端に位置する第四紀火山であり、それ以西には九州‐パラオ海嶺の延長上に位置する可能性のある阿蘇火山が位置するため、西南日本弧と琉球弧境界を議論する上で重要な火山である。川辺ほか (2015) によると、その活動は4つの活動期(第1期~第4期)に分けられ、石英とカンラン 石の共存などの非平衡な鉱物組み合わせなどから苦鉄質と珪長質なマグマの混合が起きていたと考えられている。本研究では九重火山群のほぼすべてのフローユニットから採取した火山岩類の鉱物モード・主成分化学組成と微量元素組成(Rb, Ba, Sr, Nb, Zr, Y濃度)を測定し、マグマの進化過程を議論することを目的とした。
本研究で測定した火山岩類のモード組成をカンラン 石(Ol)、直方輝石(Opx)、そして角閃石(Hbl)モード組成の三角ダイアグラムとして図に示した。この図上で各火山岩類は辺Ol-Opx上のグループと辺Hbl-Opx上のグループに2分される。我々はこれらをOpx含有量40%を基準に、それぞれ細分化し、九重火山群の火山岩類を、(1)Olに富むグループ(Ol-rich)、(2)Hblに富むグループ(Hbl-rich)、(3)Opxに富みカンラン石を含むグループ(Opx-rich)、(4)OpxとHblがともに富むグループ(Opx・Hbl-rich)に分類した。さらに、これら試料のSiO2とK2O含有量に基づき、Ol-richはOl-rich1とOl-rich2に、 Hbl-richをHbl-rich1とHbl-rich2 にそれぞれ細分化し、九重火山群の火山岩類を6グループに分類した。
鉱物モード組成に基づいて分類した6グループと主成分化学組成を比較すると、Ol-rich1、2が玄武岩質安山岩組成、Opx-rich、Opx・Hbl-rich、Hbl-rich2は安山岩組成、Hbl-rich1は安山岩からデイサイト組成を示す。また、TiO2含有量はSiO2含有量の増加に伴いSiO2含有量が約58 (wt. %) までは増加傾向を示すが、その後減少に転じるため、九重火山群下のマグマは苦鉄質端成分と珪長質端成分の単純な2端成分混合だけでは説明できない可能性が考えられる。微量元素組成では、LILE (large-ion lithophile elements) に比べHFSE (high field strength elements) が枯渇する典型的な島弧マグマの特徴を示す。本講演では、鉱物モード組成に基づいて分類した6グループに様々な地球化学的特徴の違いがみられたため、主成分元素組成と微量元素組成を用いて、その違いを解説し、それぞれのグループはどのようなマグマの進化過程を経験し噴出したのか議論する。