The 27th Annual Conference of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies

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パネルディスカッション

[PD3] パネルディスカッション 3
看護と業務の混沌を解く ~看護師の業務は何によって看護となるのか~

Sat. Aug 26, 2023 10:35 AM - 12:15 PM 第1会場 (4~5F ホールA)

座長:秋山 智弥(名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター)

[PD3-] 企画趣旨

 医療現場には、「業務に追われて看護ができない」と嘆く看護師や、「業務ばかりでここには看護がない」と漏らす実習生が少なからずいる。看護と業務がまるで別物であるかのような言動だが、これらの看護師や看護学生は何を指して“看護”や“業務”と捉えているのだろうか?看護と業務の混沌はいったいどこから来るのだろうか?チーム医療やタスク・シフト/シェアの推進、ナースプラクティショナー制度の創設等が声高に叫ばれるいまこそ、看護と業務をめぐる混沌を解きほぐし、看護の専門性を再確認しておく必要がある。
 「看護とは何か?」という根本的な問いへの明確な解答はまだ得られていないものの、看護学は学問として確実に進展し、確立された様々な方法論や技術によって、より良い患者アウトカムがもたらされていることは言うまでもない。看護教育の大学化、大学院化の進展によって、看護の専門性や学問体系がより一層確立されていくことに期待が寄せられる一方、臨床においては、チーム医療の渦中に、看護の専門性が埋もれかねないという懸念もある。例えば、「看護師の間でしか通用しない言葉はチーム医療には不要で、そうした記録は負担でしかない」という者が、他職種はもちろんのこと看護師の中にさえいる。そもそも専門用語とは、専門職の間でメンタルモデルを齟齬なく共有するための共通言語であるため、そのままの言語で他職種と共有する必要はない。そうした看護の概念や専門用語を持たぬまま、共に働き、場を共有する看護師同士の間で、“看護”という“業務”のメンタルモデルは果たして一致するだろうか?
 法律の側面から眺めると、看護師には『診療の補助』と『療養上の世話』を独占業務とすることが保助看法で定められている。さらに、『診療の補助』業務には医師の指示が必要とされているものの、指示のあり方についての規定はなく、看護師には裁量を含んだ包括的な指示が幅広く認められている。一方、医師の指示を必要とせず、看護独自の機能が十二分に発揮できるはずの『療養上の世話』業務においてさえ、医師の指示を求める傾向もある。看護師が行う『療養上の世話』業務は、はたから見れば単なる生活援助にしか見えず、無資格者でも行えるようにも見られかねない。しかし、そこには専門職としての看護師の見えない意図が含まれており、そのことが『療養上の世話』を看護師の“独占業務”たらしめているはずである。同じことは『診療の補助』にもあてはまり、同じ医行為であっても、医師の行う医行為と看護師の行う医行為には何らかの違いがあるはずである。
 本シンポジウムでは、「看護は何のためにあるかを問う」ために、看護師の業・責務・倫理を整理した上で、「業務」を「看護」たらしめる看護師側の要素、患者側の要素などを俯瞰し、また、医行為と看護行為の対比を試みつつ、看護における業務がなぜ看護師でなくてはならないのか、どうすれば看護たり得るのか、を紐解いていきたい。さらに、専門職論から見た看護の専門性や学問体系の確立に向けた今後の課題についても明らかにしたい。

パネリスト
1.山内 豊明 『看護とは何か ~医学との二項対立を超えて~』
2.田村 惠子 『看護の意図とは何か ~エキスパートナースの関心と全人的ケア~』
3.丸山 和昭 『専門職論から見た看護 ~自律した専門職であるために~』