The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Symposium

MS2

「口腔と全身疾患研究の最前線 口腔微生物の“倜儻不羈”」

Sun. Sep 17, 2023 2:10 PM - 3:50 PM A会場 (百周年講堂)

座長:川端重忠(阪大 院歯 微生物)、今井 健一 (日大 歯 感染免疫)

3:00 PM - 3:25 PM

[MS2-03] Oral anaerobes and respiratory infections

〇Naoki Iwanaga1, Hiroshi Mukae1 (1. Dept Respir Med, Nagasaki Univ Grad Sch Biomed Sci)

Keywords:口腔内嫌気性菌、プレボテラ菌、高齢者肺炎

我々は16S ribosomal RNAを用いた網羅的細菌叢解析法によって主に市中肺炎において、口腔内レンサ球菌と偏性嫌気性菌の混合感染が多く存在することを明らかにした。従来より肺炎診断のゴールドスタンダードである喀痰培養では、常在菌である口腔内レンサ球菌は病原菌とは考えられず、偏性嫌気性菌は分離困難であるため、その関係性についてはブラックボックスであった。そこで我々は口腔内レンサ球菌による肺炎モデルを作成し、プレボテラ菌が9型分泌機構依存性に産生するタンパクが口腔内レンサ球菌及び宿主免疫に作用し、単独感染では病原性の低い口腔内レンサ球菌による感染症が重症化するメカニズムを明らかにしつつある。我々は同様に網羅的細菌叢解析法により、肺非結核性抗酸菌症の発症にプレボテラ菌の関与を示唆することを報告しているが、マウスモデルにおいても同様の現象を認めている。一方で、プレボテラ菌はCOVID-19やインフルエンザウイルス感染との関連も報告されていることから、口腔内の衛生状態が様々な呼吸器感染症の発症や重症度を規定しているのではないだろうかと愚考している。その機序の解明は新たなバイオマーカーの発見や新規治療法の開発につながる可能性を秘めており、呼吸器感染症診療における新たなブレイクスルーをもたらすことが期待される。高齢化社会の到来に伴い、高齢者肺炎への対策は社会的要請であるが、健康寿命の延伸のためには、口腔ケアや嚥下リハ等の重要性がより一層見直されるべきであるし、高齢化社会のトップランナーである我が国から、口腔内嫌気性菌に着目した新しいエビデンスを創出したいと考えている。