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[O2-D-PM2-02] 光遺伝学的手法による島皮質から腕傍核への侵害情報入力の投射様式
キーワード:侵害情報、光遺伝学、アセチルコリン
口腔顔面領域における侵害情報は,一次求心性神経を介して主に三叉神経脊髄路核尾側亜核(Sp5C)に投射し,一次体性感覚野や島皮質(IC)を含む辺縁系の大脳皮質へ伝達される。腕傍核はこの経路の中継核であり,特に外側(LPBN)に侵害情報が入力する。ICは痛みの情動的側面を担い,LPBNへの下行性投射が報告されているが,その機能については不明である。そこで我々は,IC→LPBNの下行性投射がLPBNのどのニューロンにシナプスを形成しているかを検索した。GABA作動性ニューロンに緑色蛍光タンパク質を発現し,コリン作動性ニューロンに赤色蛍光タンパク質を発現させた遺伝子改変動物であるVenus×ChAT-tdTomatoラットのICに青色光刺激によって活性化する非選択的カチオンチャネルであるチャネルロドプシン2(ChR2)をアデノ随伴ウイルスベクターにて発現させた。4-5週間後にLPBNを含む急性脳スライスを作製し,ChR2を発現したIC→LPBN下行性投射線維を光刺激にて選択的に興奮させ,その時の応答をホールセル・パッチクランプ法にて電気生理学的に解析した。その結果,興奮性ニューロン,抑制性ニューロン,コリン作動性ニューロン(ChNs)の各々から興奮性シナプス後電流(pEPSC)を記録できた。各々のニューロンは,非選択的アセチルコリン受容体作動薬であるカルバコールの灌流投与によりEPSCの振幅は有意に減弱し,ムスカリンM1受容体選択的拮抗薬であるピレンゼピンの灌流投与により振幅の減弱は阻害された。これは,Sp5CにChR2を発現させ,Sp5C→LPBNにおいても,興奮性ニューロンに関しては同様の結果が得られた。したがって,ICはLPBNへ興奮性の入力を送ることでLPBNから上位脳への伝達を増幅する一方で,ChNsを活性化することで,その過興奮を制御している可能性が示唆された。