11:00 AM - 11:10 AM
[O2-E-AM2-06] First isolation of a novel temperate bacteriophage specifically killing activity against Streptococcus mutans clinical isolates
Keywords:微生物、ファージ、S.mutans
バクテリオファージ(以下ファージ)は、細菌に特異的に感染し、破壊するウイルスである。そのため、次世代の抗菌薬候補として注目されている。ファージセラピーの特徴として抗菌薬のような広い抗菌スペクトラムではなく、菌種特異的に作用することで細菌叢への影響が少ない。本研究では、う蝕細菌であるStreptococcus mutansに抗菌効果を認めるテンペレートファージKSM96(φKSM96)を世界で初めて分離したので報告する。 ファージ粒子の分離はS. mutans KSM96株にマイトマイシンCを作用させた後、培養上清から行った。ファージゲノム解析を行った結果、ファージDNAのサイズは39,820bpであった。電子顕微鏡観察によりファージKSM96はSiphoviridae属の形態を示した。臨床分離S. mutans 123株を用いてφKSM96に対する感受性試験を行った結果、複数の血清型を含む120 株がファージKSM96に感受性を示した。しかし、他の口腔レンサ球菌やLactococcus lactisは感受性を示さなかった。φKSM96に感受性を示すS. mutansの液体培地での増殖は、φKSM96の添加により強く抑制された。さらに、S. mutansのバイオフィルム形成はφKSM96を添加することで阻害された。また、S. mutansと他の口腔レンサ球菌や乳酸桿菌1~3種の細菌との共培養試験において、φKSM96を添加することによりS. mutansの割合はφKSM96非添加に比べて有意に減少した。以上の結果から、本研究で分離したφKSM96はS. mutansに特異的に作用することが明らかになった。今後、φKSM96のさらなる検証を行い、ファージのう蝕予防や治療への臨床応用の可能性について明らかにしていく。会員外協力 菅井 基行 国立感染研、谷本 幸太郎 広大 院医 矯正