The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Poster

Poster session

Sat. Sep 16, 2023 1:20 PM - 7:00 PM Poster Presentation (121講義室)

[P1-2-07] The effects of periodontal pathogen-derived butyrate on the functions of periodontal tissue cells.

〇Haruki Otani1,2, Jumpei Washio1, Satoko Sato1, Shiori Sasaki1, Satoru Yamada2, Nobuhiro Takahashi1 (1. Div Oral Ecol Biochem, Tohoku Univ Grad Sch Dent, 2. Div Periodontol Endodontol, Tohoku Univ Grad Sch Dent)

Keywords:歯周病、酪酸、糖代謝

【目的】細菌性代謝産物の一つである酪酸は、歯周組織では歯周病の発症や進行に関与するとされる一方、腸管では腸管上皮のバリア機能向上に寄与するとされており、両者への作用は全く異なる。近年、酪酸の影響は、細胞のエネルギー代謝パターンの変化を伴うことが示唆されている。そこで本研究では、細胞の主要なエネルギー源である糖代謝に着目し、酪酸による歯周組織細胞への影響を検討した。【方法】正常上皮細胞(HaCaT)と正常ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)を用い、5-10 mM酪酸ナトリウム(SB)との長時間共存培養による細胞の増殖能と糖代謝への影響を、生化学的・分子生物学的手法を用いて経時的に解析した。【結果】SBとの共存培養により、HaCaTは濃度依存的に細胞増殖能が低下し、特に10 mM SB共存時には増殖停止とともに細胞の減少が見られた。一方 HGF では、5-10 mM SB共存直後は増殖能の低下を示したが、その後、経時的に増殖能が回復し、120時間で元に戻った。また、10 mM SBと12-24時間共存培養したHGFでは、糖代謝経路が酸化的リン酸化から解糖系にシフトしたが、その後24時間以上SBとの共存培養を続けると、糖代謝経路は酸化的リン酸化へ戻った。さらに、HGFは酪酸を消費し、特に10 mM SBと24時間共存培養したHGFでは、他条件と比べ酪酸消費量が増加した。【考察】5-10 mM SBとの共存により、HaCaTでは増殖抑制を示したが、HGFではSB曝露直後は増殖能が低下するものの、経時的に酪酸耐性を獲得し増殖能が回復し、細胞への酪酸作用の「二相性」が明らかになった。その過程では糖代謝経路および酪酸消費量の変化がみられ、「二相性」との関連が示された。さらなる研究が必要であるが、歯周組織細胞に対する酪酸の真の影響は、酪酸作用の「二相性」を考慮する必要があると考えられる。