[P1-2-07] The effects of periodontal pathogen-derived butyrate on the functions of periodontal tissue cells.
Keywords:歯周病、酪酸、糖代謝
【目的】細菌性代謝産物の一つである酪酸は、歯周組織では歯周病の発症や進行に関与するとされる一方、腸管では腸管上皮のバリア機能向上に寄与するとされており、両者への作用は全く異なる。近年、酪酸の影響は、細胞のエネルギー代謝パターンの変化を伴うことが示唆されている。そこで本研究では、細胞の主要なエネルギー源である糖代謝に着目し、酪酸による歯周組織細胞への影響を検討した。【方法】正常上皮細胞(HaCaT)と正常ヒト歯肉線維芽細胞(HGF)を用い、5-10 mM酪酸ナトリウム(SB)との長時間共存培養による細胞の増殖能と糖代謝への影響を、生化学的・分子生物学的手法を用いて経時的に解析した。【結果】SBとの共存培養により、HaCaTは濃度依存的に細胞増殖能が低下し、特に10 mM SB共存時には増殖停止とともに細胞の減少が見られた。一方 HGF では、5-10 mM SB共存直後は増殖能の低下を示したが、その後、経時的に増殖能が回復し、120時間で元に戻った。また、10 mM SBと12-24時間共存培養したHGFでは、糖代謝経路が酸化的リン酸化から解糖系にシフトしたが、その後24時間以上SBとの共存培養を続けると、糖代謝経路は酸化的リン酸化へ戻った。さらに、HGFは酪酸を消費し、特に10 mM SBと24時間共存培養したHGFでは、他条件と比べ酪酸消費量が増加した。【考察】5-10 mM SBとの共存により、HaCaTでは増殖抑制を示したが、HGFではSB曝露直後は増殖能が低下するものの、経時的に酪酸耐性を獲得し増殖能が回復し、細胞への酪酸作用の「二相性」が明らかになった。その過程では糖代謝経路および酪酸消費量の変化がみられ、「二相性」との関連が示された。さらなる研究が必要であるが、歯周組織細胞に対する酪酸の真の影響は、酪酸作用の「二相性」を考慮する必要があると考えられる。