[P1-2-10] Effects of Propofol, an intravenous anesthetic, on glucose metabolic activity in hepatocytes
Keywords:プロポフォール、肝細胞、糖代謝
【目的】静脈麻酔薬プロポフォール(PPF)は、多岐の麻酔臨床の場で頻用されている。しかし、高用量、長時間の使用により、稀にPPF注入症候群と呼ばれる致死率の高い多臓器不全病態が発症することがあり、問題となっている。その発症メカニズムは不明な点が多く、有効な治療方法も確立されていない。既報において、PPFによる神経細胞のミトコンドリア機能への影響が示唆されており、PPFが全身の細胞の代謝機能に直接作用している可能性を考えた。そこで本研究では、薬剤の主要代謝器官である肝の細胞を用いて、主なエネルギー産生代謝系である糖代謝に対するPPFの影響を検討した。 【方法】対象細胞としてヒト肝癌由来細胞株HepG2細胞を用いた。通法にて培養したHepG2細胞を70%程度コンフルエンス期に回収し(非曝露細胞)、グルコース添加時の糖代謝活性をpH-stat systemを用いて測定した。さらに、反応系に50及び100μMのPPFを添加した際の糖代謝活性を合わせて評価した。また、細胞回収の前に15および30時間にわたり50及び100μMのPPFを共存させて培養させた同細胞(事前曝露細胞)を準備し、同様に糖代謝活性を測定した。 【結果】非曝露細胞においては、糖代謝活性が、PPFの添加により濃度依存的に増加した。一方、事前曝露細胞では、非曝露細胞で観察されたPPF添加時の糖代謝活性増加傾向が鈍化した。 【考察】PPFは濃度依存的に肝細胞の糖代謝活性を上昇させることが明らかになった。その機序は現段階では不明だが、PPFが細胞糖代謝に直接作用することが示された。一方、PPFに長時間曝露すると、PPFの糖代謝活性促進効果は減弱した。PPFの長時間曝露によって肝細胞の糖代謝特性が変わり、そのことがPPF注入症候群の発症に関連する可能性が示唆される。今後、さらに検討していきたい。