第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-06] ヘルトビッヒ上皮鞘は歯小嚢細胞のセメント芽細胞への分化誘導に関わる

〇新藤 美湖1、池崎 晶二郎2、大津 圭史2、加倉 加恵1、城戸 寛史1、原田 英光2 (1. 福歯大 インプラント、2. 岩医大 歯 発生生物)

キーワード:ヘルトビッヒ上皮鞘、セメント質、基底膜

歯根の発生過程で歯小嚢細胞は,セメント芽細胞,歯根膜線維芽細胞,骨芽細胞に分化して歯周組織を形成する。しかし,その細胞の運命決定のメカニズムは明らかになっていない。形成中の象牙質の歯根膜側を透過型電子顕微鏡で観察すると,ヘルトビッヒ上皮鞘(HERS)との間に基底膜様構造が観察された。さらに同様の膜は,HERSが断裂した後の象牙質と歯小嚢細胞との間にも観察されたことから,歯小嚢細胞の象牙質への接着とセメント芽細胞への分化誘導,さらにはセメント質形成に深く関わると考えた。HERSが形成した基底膜様構造と歯小嚢細胞分化との関係を調べるために,赤色蛍光tdTomato発現HERS細胞株HERS02Tを樹立し,この細胞が分泌する基底膜成分が歯小嚢細胞の分化に与える影響を調べた。HERS02Tをコンフルエントの状態で培養した後,酵素を用いない方法で培養皿から細胞のみを剥離して,培養皿表面に分泌物をコートした。歯小嚢細胞は非コート皿では接着に6時間以上を要したが,このコート培養皿では30〜60分で接着した。さらにこの培養を分化誘導培地に交換して石灰化誘導能について比較した。コート培養皿の方がコラーゲン形成能,アルカリフォスファターゼ活性,アリザリンレッドによる石灰化染色において優位性を示した。以上の結果から,HERSは象牙質歯根膜面に基底膜を形成したあとに離脱し,その後歯小嚢細胞が象牙質表面に遊走してくると,この基底膜を利用してセメント芽細胞へ分化するのではないかと考えられた。