[P1-3-14] Projection of proprioceptive signals from the jaw-closing muscle spindles to the cerebellar cortex
Keywords:閉口筋筋紡錘感覚、小脳皮質、神経投射
小脳は顎運動の繊細な調節を行っている。これには閉口筋筋紡錘感覚の小脳への入力が関与すると考えられているが、その詳細な神経機構は不明である。本研究では、閉口筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核 (Su5) から小脳皮質への投射の解明を目指した。ラットで、咬筋神経の電気刺激と開口運動に対する神経応答を記録してSu5を同定し、順行性神経トレーサーのbiotinylated dextran amine (BDA) を微量注入した。標識軸索終末の小脳皮質分布を調べたところ、主に小脳半球部の単小葉B、係蹄状小葉第II脚、片葉の3カ所に苔状線維の巨大終末が両側性に認められた。これらの部位で、咬筋神経の電気刺激と開口運動による神経応答を記録し、逆行性神経トレーサーのFluorogoldまたはcholera toxin B subunitを注入したところ、両側のSu5に標識細胞が認められた。また、Su5-小脳皮質経路の特性を明らかにするため、頸部と上肢の筋紡錘感覚が入力する外側楔状束核 (ECu) にBDAを注入し、標識軸索終末の分布を比較した。ECuから小脳皮質への投射は、虫部第I-V、VIII、IX小葉、半球部の正中傍小葉と錐体結合節に見られ、BDA注入部位と同側が顕著に優位であった。Su5からの標識軸索終末は小脳皮質の外側部 (特に半球部)に分布したのに対して、ECuからは小脳皮質の内側部(特に虫部)に分布し、両者の分布はほとんど重複しなかった。以上より、閉口筋筋紡錘感覚が小脳皮質の離れた3部位に伝達されたことから、閉口筋筋紡錘感覚が異なる小脳機能に寄与する可能性が示された。また、Su5から小脳皮質への投射様態は、頸部と上肢の筋紡錘感覚を伝達するECuからの投射様態とは異なることから、小脳で筋紡錘感覚が担っている機能において、口腔顔面部と体部とは別々に処理されている可能性が示された。