[P1-3-18] Role of ADP on the masseter muscle pain caused by continuous masseter muscle contraction
Keywords:咬筋痛、ADP、P2Y12
顎関節症(Ⅰ型)でみられる咬筋痛は歯ぎしりやクレンチングといった咬筋の持続的収縮が要因であると考えられている。われわれは,電気刺激により持続的収縮した咬筋から放出されるATPが咬筋痛発症に関与することを報告している。最近,ATPの代謝産物であるADPも異常疼痛に関与するとの報告があるが,持続的収縮による咬筋痛にADPが関与するかは不明である。本研究では,咬筋の持続的収縮による咬筋痛モデルを作製し,咬筋痛に対するADPの役割を解明することを目的とした。 深麻酔下にてSDラット (7w, male) の右側咬筋部に電極を刺入し,電気刺激 (1 hour/day, 10 V, interval: 10 msec, duration: 200 μsec) により咬筋を7日間収縮させた。デジタルフォンフライを用いて咬筋に圧刺激を加え,逃避閾値を21日間測定した。電気刺激開始後7日目,摘出した咬筋へ圧刺激を行い,咬筋から放出されるATP, ADPおよびAMP量を,高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。また,P2Y12受容体拮抗薬を咬筋内に連日投与し,逃避閾値の変化を計日的に測定した。さらに,咬筋内におけるP2Y12受容体の発現を免疫組織化学的に検索した。 咬筋の持続的収縮開始後3日目から持続的収縮終了後10日目まで咬筋に機械アロディニアが生じた。持続的収縮開始後7日目,持続的収縮した咬筋から放出されるATPおよびADP量が増加した。咬筋の機械アロディニアは,P2Y12拮抗薬咬筋内投与によって抑制された。また,P2Y12受容体は咬筋内組織に発現した。 以上のことから,咬筋の持続的収縮により生じる咬筋痛は咬筋組織から放出されるADPのP2Y12受容体への結合が関与することが示唆された。