[P2-2-10] Study of the acid resistance of enamel after removal of orthodontic brackets.
Keywords:齲蝕抵抗性、エナメル質耐酸性、歯科矯正用接着剤
【緒言】 矯正用ブラケット(ブラケット)除去後の歯面に残留した接着剤が、その後のう蝕抵抗性に与える影響はいくつかの研究がなされているものの、視覚的・数値的に捉えた報告は極めて少ない。本研究は、歯面に残留した矯正用接着剤がその後エナメル質表面の耐酸性に与える影響を検討したものである。【材料と方法】 本格的矯正歯科治療で抜歯された、ヒト上顎第一小臼歯エナメル質表面を清掃・研磨後、唇側面に直径6mmの円状マスキングを施した。次いで、歯冠部全域にトップコートを塗布・乾燥後にマスキングを除去し、直径6mmの円状にエナメル質表面が露出する状態とし、実験群と対照群に区分した。 実験群は光重合型矯正用接着剤(トランスボンド,3Mユニテック,東京)でブラケットを装着、24時間後にそれをブラケットリムーバーで除去し、研磨を行った。対照群は歯面研磨のみでブラケットを接着しなかった。実験群・対照群を共に0.1M乳酸に浸漬し、唇側面を人工的に脱灰した。脱灰開始から2,4,6,8,10日目にμCT装置(ScanXmate、コムスキャンテクノ,神奈川)で撮影後、3D画像解析ソフトウェア(Molcer、ホワイトラビット,東京)で脱灰域を抽出、表面積と体積を計測した。【結果】 脱灰部分の表面積・体積は、対照群で脱灰4日目から急激に増加し、10日目では深側へ著明な広がりをみせた。実験群では2日目から脱灰がみられたが、最終的に対照群のおよそ1/2の計測結果となった。【考察および結論】 実験群の脱灰域が対照群の約半分なのは、エナメル質表面から浸透した接着剤が歯面研磨後も残留しており、それが脱灰への抵抗性を示したためと考察する。 ブラケット撤去後の歯面に耐酸性が得られていることが明らかとなった。故に、ブラケット除去後には,エナメル質内に浸透した矯正用接着剤を完全に除去するよりも,研磨により表面を滑沢にすることが重要といえる。