第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月18日(月) 08:30 〜 15:50 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P3-2-21] 口腔扁平上皮癌におけるm6AメチルトランスフェラーゼMETTL5の発現解析

〇嶋 香織1、Nguyen Phuong Thao1、下拾石 雄大1,2、笹平 智則1 (1. 鹿大 院医歯 口腔病理、2. 鹿大 院医歯 顎顔面外科)

キーワード:口腔扁平上皮癌、RNAメチル化、METTL5

悪性腫瘍において、遺伝子発現制御に関わるエピジェネティック変化のひとつとして、RNAメチル化が注目されている。メチル化RNAとして知られるN6-メチルアデノシンmethyladenosin (m6A) は、mRNAだけでなくrRNAやnon-coding RNAがメチル化して生じるが、それぞれのメチル化機構や酵素は異なっている。RNAメチル化酵素METTL5はMethyltranferase-like (METTL) family の一つで、18s rRNAのメチル化酵素として特異的に働きmRNAの翻訳の制御を行い、発生過程においてはMETTL5発現と多分化能との関連性が報告されている。一方、悪性腫瘍においても、子宮内膜癌でMETTL5発現とDNAミスマッチ修復との関連性が報告されているが、その他の臓器での機能は不明で、口腔癌におけるMETTL5発現検索や機能解析はなされていない。The cancer genome atlas (TCGA) の解析結果により、頭頸部癌組織では正常粘膜と比較し、METTL5の発現が高いことが分かった。また、METTL5の発現といくつかの癌幹細胞マーカーの発現には正の相関があると示された。その結果を踏まえ、複数のヒト口腔扁平上皮癌細胞を用いてMETTL5発現のスクリーニングを行ったところ、歯肉癌由来細胞Ca9-22ではMETTL5が高発現し、舌癌由来HSC4細胞では低発現するという結果を得た。また、METTL5の発現は、それぞれの細胞株で、癌幹細胞マーカーであるALDH1A1およびPOU5F1の発現と正の相関があることが明らかとなった。また、口腔扁平上皮癌臨床検体において、METTL5は病期が進行しているほど、また、浸潤しやすい症例ほど発現が高いことが示された。以上の結果より、口腔扁平上皮癌においてMETTL5はoncogenicに機能することが明らかとなった。