[P3-3-16] Establishment of mouse junctional epithelial cells and culture system
Keywords:付着上皮、上皮バリア、歯周組織
付着上皮はエナメル質(ハイドロキシアパタイト)に直接接着することから,歯肉上皮や歯肉溝上皮とは異なるメカニズムによる生体バリア機能を有していると考えられ,この機能低下は歯周病発症の重要な因子のひとつであると考えられている。従って,歯肉溝環境が付着上皮バリア機能に与える影響を調査する目的で付着上皮細胞株の樹立とバリア機能を評価する実験系の構築を行った。付着上皮はエナメル芽細胞に由来することから,マウス切歯由来の培養エナメル上皮細胞から、最終分化形としてのハイドロキシアパタイト接着能を指標に細胞を選択し、マウス付着上皮細胞株(mHAT-JE01)とした。mHAT-JE01の免疫細胞染色を行ったところ、付着上皮マーカーであるCK14やCK19,基底膜接着タンパクであるODAMおよびFDC-SPの発現を認めた。さらにmHAT-JE01はハイドロキシアパタイト上で高い遊走能と増殖能も示した。以上より,mHAT-JE01は付着上皮の特性を有する細胞株であることが示された。次に,細胞極性や細胞接着機構を制御するRhoシグナルを用いてバリア機能実験の評価を行った。mHAT-JE01をインサートメンブレン上で培養し,チャンバー上部と下部との物質の透過性ならびに経皮的電気抵抗値(TEER),基底膜基質,細胞間接着分子等の発現を調べた。Rhoシグナルの抑制剤であるROCK インヒビターを添加すると物質透過性の亢進,TEER値の低下,基底膜基質,細胞間接着分子等の発現低下,細胞膜への局在の減少が観察された。一方,Rhoの活性化剤を添加するとバリア機能は向上した。今回樹立したmHAT-JE01とこの細胞を用いたインサート細胞培養系は、歯肉溝環境が付着上皮のバリア機能に与える影響を評価できる有用な系であると考えられ,今後歯周病予防におけるバリア機能の向上に向けた薬剤の探索に応用する予定である。