The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Symposium

US10

「異分野融合研究による歯科イノベーションへの挑戦」

Mon. Sep 18, 2023 8:30 AM - 10:00 AM C会場 (133講義室)

Chair:Satoshi Emilio Hara

8:42 AM - 8:54 AM

[US10-02] The effect of oral dysbiosis on behavior disorder-oral-gut-brain axis-

〇Sayaka Katagiri1 (1. Dept Periodontol, Tokyo Med Dent Univ Grad Sch Med Dent Sci)

Keywords:歯周病、脳、腸内細菌叢

ヒトが社会生活を送るうえで、心身の健康を維持することが必要である。これまでにヒトを対象とした疫学研究、モデル動物の研究から、口腔システム不全が脳機能の低下を引き起こすことが示されている。本研究では、口腔-腸-脳連関に着目し、結紮誘導歯周炎モデルマウスを用いて、歯周病が脳機能に及ぼす影響を、分子・細胞・神経回路・行動の多階層で解明し、細菌叢解析および血液リピドーム解析により口腔内細菌叢の破綻が脳機能に影響するメカニズムを明らかにする。 絹糸と便からDNAを抽出し、それぞれ口腔内と腸内の細菌叢解析を行ったところ、口腔内と腸内の両方で歯周炎や大腸炎に関連するKlebsiellaの存在比率が上昇していた。また、腸内では、大腸炎やうつ病に関連するEnterococcusの存在比率が上昇していた。これらの結果より、口腔内および腸内で細菌叢破綻が生じていることが確認できた。結紮誘導歯周炎モデルマウスの行動を解析したところ、オープンフィールド試験において、運動活動性は変わらないが、不安傾向が高いこと、またロータロッド試験では、運動機能が低下していることが明らかになった。また、脳細胞解析と遺伝子発現解析を行った結果、大脳皮質前頭前野において、ミクログリアの減少が観察され、遺伝子発現パターンも異なっていた。さらに、脳機能への影響が報告されている、コルチコステロンおよびコルチゾールが血漿中で有意に上昇していた。この研究を通じて、口腔内細菌と運動機能や精神状態を含む脳機能との関わりが解明され、口腔内の環境の改善が心身の健康へとつながることのエビデンスの構築が期待される。