The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Symposium

US3

「歯科法医学鑑定の最前線-DNA多型・DNA修飾等を指標とした個人識別-」

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 10:30 AM B会場 (123講義室)

座長:山田 良広(神歯大 院歯 歯科法医)、近藤 真啓(日大 歯 法医)

9:35 AM - 9:55 AM

[US3-03] DNA typing using FFPE samples

〇Hisako Saitoh1 (1. Dept forensic Dent, Tokyo Med Dent Univ Grad Sch Med Dent Sci)

Keywords:DNA型鑑定、FFPE、ホルマリン

DNA型鑑定は、身元不明死体の個人識別、事件に関係した被疑者や被害者の同定、血縁の有無を判断するための親子鑑定に利用されている。使用される検査試料は、死体、事件の関係者および現場等から採取されたスワブ、血液、唾液等の体液、皮膚や筋肉等の軟部組織、歯や骨等の硬組織などが多い。さらに、ホルマリン固定パラフィン包埋サンプル(formalin-fixed paraffin-embedded : FFPE)を試料とすることもある。これは、故人の手術中に摘出されて保存されていた組織からの親子鑑定や、病院内での検体取り違えを疑った異同識別に関してのDNA型鑑定が必要な場合である。
 FFPEサンプルは、室温下での長期保管が可能なため、多くの診療機関および研究機関でも診断後に保管されており、近年ではFFPEサンプルを用いたさまざまな遺伝子解析が進み、注目されている。しかし、FFPEサンプルの組織内では、ホルマリン固定により、タンパク質−タンパク質やタンパク質−核酸の架橋により、また、ホルマリン内のアルデヒドの酸化によって生じるギ酸によって、高度にDNAの分解および変性が生じている。また、FFPEサンプルから回収されるDNAの質は、ホルマリンの種類、組織の固定や包埋の技術、また保存条件やその期間によって影響を受けるため、ばらつきが大きい。そのため、FFPEサンプルを用いたDNA型鑑定の場合、再現性のある、信頼性の高い結果を得るには困難を伴うが、我々は、それらの鑑定例を経験したので紹介する。
 FFPEサンプルを用いたDNA型鑑定においては、過去に保存された試料について時間を遡って検査を実施できるという利点があり、FFPEサンプルから回収されるDNAの特性や問題点をよく理解したうえで、適した精製法や検出方法を検討し、今後のDNA型鑑定に応用していく必要があると考えている。