The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Symposium

US3

「歯科法医学鑑定の最前線-DNA多型・DNA修飾等を指標とした個人識別-」

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 10:30 AM B会場 (123講義室)

座長:山田 良広(神歯大 院歯 歯科法医)、近藤 真啓(日大 歯 法医)

10:10 AM - 10:30 AM

[US3-05] Age estimation through DNA methylation levels in teeth, saliva, and buccal mucosa samples

〇Masahiro Kondo1 (1. Dept Leg Med, Nihon Univ Sch Dent)

Keywords:年齢推定、エピジェネティクス、DNAメチル化

身元不明死体や犯罪現場に残された生体資料に由来するDNAを用いた個人識別または加害者の推定は、法医学分野における主要な実務である。
近年、特定の遺伝子の上流CpG領域におけるシトシン残基のメチル化状態が加齢に伴い変化すること、さらに喫煙などの生活習慣やストレス、ならびにがんを始めとした各種疾病への罹患などにより影響を受けることが報告されている。これらの報告は、特定遺伝子のCpG部位におけるメチル化率の定量解析システムが構築されれば、年齢を始めとするさまざまな個人情報の推定に応用できる可能性を示唆している。特に年齢は、個人の特定に繋がる手がかりがない事例において、候補者の絞り込みに有益な情報を提供する。
そこで我々は、リアルタイムメチル化特異的PCR(RT-MSP)法を用いて、抜去歯(59歯)より抽出したDNAのメチル化状態を指標とした年齢推定法の開発を試みた。まず始めに、候補遺伝子のメチル化CpGを特異的に認識するプライマーを設計してRT-MSPを行い、これにより算出されたメチル化率が実年齢と強い相関を示す遺伝子を選択した。次に、それら遺伝子(ELOVL2およびEDARADD)のメチル化率を説明変数とする年齢推定のための回帰式を算出した。その結果、外部資料(40歯)による回帰式の推定精度は平均絶対誤差(MAE)で8.28であった。
現在は、頰粘膜や唾液から得られる資料においても利用可能な年齢推定式の算出に取り組んでいる。なかでも、頰粘膜由来のDNA資料では、ELOVL2のメチル化率のみを指標とした年齢推定式でも比較的高い精度が得られることを見出している。
さらに今後は、喫煙歴や歯周病への罹患がDNAのメチル化状態に及ぼす影響についても検討していく予定である。本講演では、将来の展望も含め、我々の研究成果について報告する。