The 65th Annual Meeting of Japanese Association for Oral Biology

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Symposium

US4

「味覚に基づく摂取行動の調節メカニズム」
 スポンサー:味の素株式会社、株式会社ゼンショーホールディングス

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 10:30 AM C会場 (133講義室)

座長:乾 賢(北大 院歯 口腔生理)

10:00 AM - 10:30 AM

[US4-03] The role of the central nucleus of the amygdala and the bed nucleus of the stria terminalis in conditioned taste aversion

〇Tadashi Inui1, Emi Kikuchi1,2, Makoto Funahashi1 (1. Dept Oral Physiol, Hokkaido Univ Grad Sch Dent Med, 2. Dept Orthodont, Hokkaido Univ Grad Sch Dent Med)

Keywords:味覚、中枢、摂取行動

味覚情報の中枢処理が摂取行動を制御する生理学的機序の一端を明らかにするために味覚嫌悪学習の神経メカニズム解明に取り組んでいる.味覚嫌悪学習の想起に扁桃体中心核(central nucleus of the amygdala, CeA)と分界条床核(bed nucleus of the stria terminalis, BNST)が関与することが示唆されているがその役割は明らかではない.そこで,CeAとBNSTの神経活動を化学遺伝学的手法によって制御し,行動表出に及ぼす影響を調べた.アデノ随伴ウィルスを用いて野生型マウスのCeAあるいはBNSTのニューロンに興奮性あるいは抑制性人工受容体を発現させた.サッカリンと塩化リチウムの対呈示による条件づけを行った後,テストにおいて人工リガンド(deschloroclozapine, DCZ; 50 µg/kg, i.p.)あるいは溶媒を投与し,30分後にサッカリン溶液を再呈示して摂取行動と接近行動を解析した.CeAニューロンの活動を亢進すると高頻度リックと摂取量が増加したのに対し,活動を抑制すると高頻度リックと摂取量が減少した.高頻度リックは味覚嗜好性の指標であることから,CeAのニューロン活動は嫌悪の表出に関与していると考えられる.一方,BNSTニューロンの活動亢進はサッカリンへの接近潜時を遅延させたのに対し,活動抑制は高頻度リックと摂取量を減少させた.接近潜時は不安の指標であることから,BNSTニューロンの活動抑制は不安を増大し,活動亢進は嫌悪を増強したと考えられる.CeAとBNSTは負の情動に関わる拡張扁桃体といわれる神経回路を構成するが,味覚嫌悪学習において果たす役割は異なることが示唆される.本発表においてはこれらの結果を紹介するとともに味覚嫌悪学習の中枢神経機序の全体像についても議論する.