日本文化人類学会 第54回研究大会

H会場 プログラム・要旨

5/5時点での暫定版の大会プログラムです。
発表を辞退される方がいた場合、変更になりますのでご了承ください。

個別プログラム H会場
(発表タイトルをクリックすると要旨が読めます)

5月30日(土)
9時55分―11時55分【分科会】 自己変容型フィールド学習に向けて―課題解決型プロジェクト学習とフィールドワーク教育-
(代表:箕曲在弘、コメンテーター:佐藤知久/中山京子)
13時00分―15時25分【個別発表】
5 月31 日(日)
9時30分―11時55分【個別発表】 

13時00分―15時55分【映像発表】(*運営側の都合で中止になりますが、ここで紹介します) 
  • H17 映像1(上映60分)分藤大翼(信州大学)「からむしのこえ」
 本作品は、福島県大沼郡昭和村における「からむし織」文化を対象としている。からむしはイラクサ科多年草で、からとれる繊維は縄文時代から利用されている。昭和村では江戸時代中期には栽培が確認されており、今日まで越後上布や小千谷縮原材料を供給している。本作品は、からむし栽培から、繊維を取り、糸を績み、布を織るまで工程を記録しており、物質文化映像民族誌となっている。また、技術的な側面だけではなく、継承にたずさわる人々心情的な側面についても、多く語りによって描き出している。
 本作は、国立歴史民俗博物館共同研究一環として、3年をかけて制作し、民俗学と民族学それぞれ研究者が協力することで完成した。上映を通じて両者研究を架橋することが、上映意図一つである。また、制作者である分藤大翼と春日聡は、これまで映像人類学分野で研究・創作をおこなってきた。本研究大会において最新成果を発表することで、新たな議論を喚起することも上映する意図となっている。
 本作完全版は92分だが、研究大会規定にあわせて60分に短縮したバージョンを既に作成している。
  • H18 映像2(上映40分)藤野陽平(北海道大学)・遠藤協(慶應義塾大学)「軍服を着たカミサマー台湾の日本神信仰ー」
 台湾で日本人が神として祀られている。仮に「日本神」と呼ぶこれらの神明の出
自は、軍人、警察官、官吏などであり、ほとんどが1895年から1945年におよぶ日
本統治下に活動していたとされ、信仰されるようになるまでの興味深い縁起がそ
れぞれに語られている。
 明治時代、重税の取り下げを求めて上司と村人の間で板ばさみとなり自害した
警察官森川清治郎は、後年村人の夢枕に立ち、流行病の到来と予防法を告げて村
を守った「義愛公」として祀られている。太平洋戦争末期に戦死した零戦パイロ
ット杉浦茂峰は、20年後白い幽霊として現れ、祟りを避けるために祀られるうち
「飛虎将軍」となった。初期の台湾統治に携わった高級官僚・田中綱常の霊は
1980年代後半にある女性に乗り移り、のちに「田中将軍」として祀られようにな
った。いずれにもシャーマンの活動の形跡がみられる。
 多様な日本神信仰の基盤にあるのは、祀られざる死者である「鬼」がおよぼす
祟りにいかに対処するかという民間信仰とみられる。引き揚げによって祀る者が
いなくなった日本人の霊への対処が新たな神々を生み出しているのだ。ポストコ
ロニアルな宗教実践である日本神信仰の姿を紹介する。
  • H19 映像3(上映40分)グリゴレ・イリナ(東京大学)「雪さんがいる場所」
​ 本映像ではダンサーの雪雄子(ゆき・ゆうこ)の日常を探って「踊りが生まれる瞬間」と自然のなかの生き方を映す。雪雄子は1950年に東京都立目黒高校を卒業後すぐにモダンバレエを習い、18歳で土方巽に出会い強い影響を受けた。女性ダンサーとして高い評価を受けたあと、1989年に北方舞踏派から独立、青森県津軽地方に移住し、現在は岩木山麓のリンゴ畑と渓流に囲まれた山荘でパートナーと暮らしながら、国内外で活動を続けている。
 本作品は、2018年以降の雪雄子の日常とワークショップの様相を撮った資料をインスタレーション「空間演出」としてまとめたものである。従来の民族誌映像は単独のスクリーンで上映されるが、今回はより踊りの雰囲気に近づくため映像インスタレーションという手法に挑戦する。雪雄子の踊りはそれ自体が一つの生き方であって、その踊りが日常の一部として生み出されていることを、映像の力によって明らかにする。
 2018年11月に弘前市の鳴海要記念陶房館で開かれた「出来事の木霊」展では、雪雄子のスピード感あふれる踊りは、踊り手がトランス状態となって、白い鳥、木、キツネ、熊などにも見えるような、野生の生物の様々な残像の連続として映り現れている。また、ワークショップ「花、鳥、風になる」においても、彼女は独得の哲学に従って踊りの身体技法を披露する。