The 67th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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特別講演

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特別講演1
新型コロナウイルス感染症:現状と課題

Sat. Nov 6, 2021 10:50 AM - 12:00 PM LIVE配信第1会場

座長:大澤功(愛知学院大学教授・第67回学術大会長)

10:50 AM - 12:00 PM

[SL1] 新型コロナウイルス感染症:現状と課題

講師:脇田隆字 (国立感染症研究所所長)

〈プロフィール〉
S58年 名古屋大学医学部卒業
S58 年-S63年 臨床病院で勤務
S63 年-H 4年 名古屋大学大学院医学研究科
H 4 年-H 7年 マサチューセッツ総合病院癌センター分子肝臓病研究室 客員研究員
H 7 年-H18年 東京都臨床医学総合研究所および東京都神経科学総合研究所 勤務
H18年- 国立感染症研究所 ウイルス第二部 部長,副所長,所長(現在に至る)

Keywords:新型コロナウイルス ワクチン 感染対策

 2019年末から中国湖北省武漢市に原因不明の肺炎が流行との報道があった.当初は武漢市の海鮮市場周辺で集団発生があり,その後全世界に流行が拡散した.2020年1月10日に公表されたSARS-CoV-2 ウイルスのゲノム配列に基づき,感染研ではウイルス遺伝子検査系を開発した.1月15日に武漢に滞在歴のある国内初症例が確認された.
 WHOの緊急委員会は1月31日にCOVID-19を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当すると発表した.WHOは3月11日にCOVID-19の世界的な感染拡大の状況,重症度からパンデミックとみなせると表明した.わが国では,3月上旬からは海外との関連が疑われる事例が増加し,さらに3 月下旬には都市部で感染者数が急増した.3月28日には「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が発表され,4月7日には最初の緊急事態宣言が発出された.感染者数は4月初旬をピークとして,減少に転じ,5月25日には解除された.しかし,6月中旬以降,主に大都市及びその周辺自治体において,20代-30代を中心として増加に転じた.その後7月下旬をピークとして新規感染者数は再び減少に転じたが,9月以降首都圏での感染者数が下げ止まり,地方でもクラスターが散発する状況が続いた.その後は経済活動の活性化のためのGoToキャンペーン事業なども実施されたが,年末を迎え非常に大きな感染拡大となり,2021年のはじめには再び緊急事態宣言が発出された.2020年末からアルファ株の侵入と流行,さらに2021年の5月以降にはデルタ株の侵入と流行があり,緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出され,非医療的介入による対策が繰り返されている.
 COVID-19感染症の根本的な解決のための切り札として期待されているワクチンの接種が2021年2月頃から始まった.すでに国民の半数以上が2回目の接種を終えた.さらに接種が進むことにより,流行の制御が期待されている.しかし,12才未満は当面接種の対象外であり,若者世代の接種率がどこまで向上するかはまだよくわからない.今後は,若者世代に感染感受性者が多く存在する状況になり,子供が流行の中心世代になることも危惧される.従って,学校での感染対策が重要性を増すと考えられるが,感染経路としてはいわゆるマイクロ飛沫感染(エアロゾル感染)が重要視されているため,手指衛生や教室内の消毒だけでなく不織布マスクを正しく着用することや,教室の換気が重要と考えられる.部活動を含む課外活動,寮生活など感染リスクの高い活動も注意が必要となる.さらに,職員と学生・生徒の健康の管理も必要で,軽い症状がある場合にはすぐに検査や受診ができることが望ましい.冬期を迎えると,インフルエンザの同時流行も危惧される.新型コロナウイルス感染症もしばらく続くことを念頭におき基本的
な感染対策(マスク,手指衛生,身体的距離,換気,三密回避)を続けていきたい.