The 67th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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シンポジウム7
教科としての「保健」を学ぶ本質とは何か-高校保健の新たな学習内容を手がかりにして-

コーディネーター:野津有司(筑波大学名誉教授),岩田英樹(金沢大学)

[SY7-1] 「安全な社会生活」の位置づけと内容

渡邉正樹 (東京学芸大学教職大学院)

Keywords:安全な社会づくり 危険予測・回避 情報

1 .新しい内容のまとまりとしての「安全な社会生活」
 平成30年告示の学習指導要領では,新たに「安全な社会生活」が内容のまとまりとして示された.平成11年および平成21年の学習指導要領では「(1)現代社会と健康」の中に交通安全と応急手当が位置づいていたが,平成30年学習指導要領では独立した形となった.それとともに,交通安全中心から防災,防犯等も含む社会の安全全般を扱うことになった.「安全な社会生活」に含まれる「㋐事故の現状と発生要因」と「㋑安全な社会の形成」では,交通事故に限定されず,事件・事故および災害に関わる共通した内容が扱われる.防災については他教科でも扱われており,カリキュラム・マネジメントに基づく指導が必要とされている.科目保健としての特徴を踏まえつつ扱うことが重要であろう.
 「(イ)応急手当」では中学校と同様にAED の実習を含む内容となっている.

2 .「安全な社会生活」の技能,思考力・判断力・表現力等
 科目保健の4つの内容のまとまりで唯一技能が位置づいているのが「(イ)応急手当」である.心肺蘇生法では手技に止まらず,複数での対応や胸骨圧迫の重視を明示している点が中学校とは異なっ
ている.
 また思考力・判断力・表現力等には表1に示したように,危険予測・回避の方法を考える点が「安全な社会生活」の特徴と言える.従来,安全教育においては危険予測・回避能力の育成が重視されてきた.保健教育では平成20年中学校学習指導要領の「傷害の防止」に危険予測・回避の記載があったが,新学習指導要領では小中高を通じて思考力・判断力・表現力等に危険予測・回避が記載されたことで,保健教育における安全の学習に関して中核となる概念と言えるだろう.

3 .「情報」の位置づけ
 「情報」については他の内容のまとまりにおいても取り上げられているが,「安全な社会生活」でも同様である.解説では「㋐事故の現状と発生要因」に情報体制があるが,近年の豪雨災害や土砂災害の増加に関して避難情報の理解とそれに基づく避難行動が住民に求められている背景から,災害情報について学ぶことはハザードマップや避難行動のためのタイムラインの理解にもつながることが期待される.

SY7-1