9:00 AM - 10:40 AM
[JCAA-6] アドレノメデュリン-RAMPシステムの機能分化による,血管,リンパ管の恒常性制御機構
Keywords:Vascular system, Vasculitis and Lymphedema
【目的】アドレノメデュリン(AM)は脈管系で産生され,多彩な生理活性を有するペプチド因子である。我々はAMの多彩な生理活性を生み出すメカニズムを解明するため,AM受容体システムに着目した。AM受容体には,複数存在するRAMPタンパク,いずれか1つが結合する。本研究では,AM受容体に親和性の高いRAMP2,3について,両者の機能分化と病態生理学的意義を検討した。【方法】胎生期から遺伝子欠損させたマウス,および成体において遺伝子欠損を誘導できるマウスを樹立し,脈管系の発生と成体での病態的意義を検討した。【結果】RAMP2ノックアウトマウス(-/-)は,胎生期に浮腫や出血により致死となったが,成体で遺伝子欠損を誘導すると,血管炎と臓器障害を自然発症することから,RAMP2は血管の発生と恒常性維持の双方に必須であることが示された。これに対しRAMP3-/-は正常に出生し,成体の血管にも異常を認めなかった。一方,術後リンパ浮腫モデルでは,血管,リンパ管特異的RAMP2-/-では共に変化を認めないのに対し,RAMP3-/-のみでリンパ浮腫の増悪を認めた。RAMP3-/-ではリンパ管の異常拡張と,ドレナージの低下,腸管リンパ管の吸収遅延を認め,リンパ管内皮細胞の形態,機能異常を認めた。【結論】AM-RAMP2系が,発生段階および成体の血管新生,血管恒常性を制御しているのに対し,AM-RAMP3系は,成体でのリンパ管機能を制御している事がはじめて明らかとなった。AM-RAMP系は,RAMP2,3の機能分化により脈管系全体の恒常性を制御するシステムであり,新たな治療標的として期待される。