第55回日本脈管学会総会

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一般演題(口述)

画像診断2

Thu. Oct 30, 2014 11:24 AM - 11:56 AM 第5会場 (201会議室)

座長: 陣崎雅弘(慶應義塾大学医学部 放射線学)

11:24 AM - 11:56 AM

[O-11-3] 下肢静脈内の高速拍動性血流から得られた知見

井門浩美1, 坂本伸吾2, 寺野雅美1, 正木裕子1, 安達名緒子1, 出村豊1, 田中教雄1, 佐野道孝1, 河原田修身2, 原田光一郎2, 鎌倉史郎1,2 (1.国立循環器鋲研究センター 臨床検査部, 2.国立循環器鋲研究センター 血管科)

Keywords:venous ultrasonography, pulsatile high-velocity flow

DVTの検索に下肢静脈エコー検査が普及してきた。当院では,下大静脈から下腿まで断層法で静脈内腔を観察し,補助的にカラードプラ法も併用している。体位は,下大静脈から大腿までを仰臥位,膝窩から下腿までを座位で行うが,大腿は座位で行う場合も多い。今回下肢静脈内に異常拍動性血流を検出した症例を経験し,知見を得たので報告する。症例は74歳女性。慢性右心不全あり。右房拡大著明で,うっ血・腹水貯留・下腿浮腫があり,慢性肺血栓塞栓症鑑別目的で下肢静脈エコーを施行した。仰臥位で,下大静脈から大腿静脈に血栓は認めなかった。大腿静脈に拍動を認め,拍動は浅大腿静脈で顕著で,カラードプラ上乱流様血流として認めた。パルスドプラで,最高流速1m/sの逆行性の層流血流が記録され,動脈波形に酷似していた。心電図モニターを装着し浅大腿動脈波形と比較した結果,ピーク形成の時相は両者で異なり,静脈性の拍動性血流と考えられ,成因は右房圧上昇が示唆された。仰臥位から座位にすると,流速が軽減し,高速血流は静脈性と判断した。また高速血流の近傍に静脈弁が存在した。両側下腿静脈までに血栓は認めなかった。本症例は,47歳時に大動脈弁形成術,僧帽弁置換術,三尖弁輪形成術が施行され,弁輪拡大に伴う高度三尖弁閉鎖不全を併発している。臥位では高度三尖弁逆流による右房圧上昇の影響が下肢まで及び相対的に高速血流を引き起こしたが,座位で静脈還流が減少し,流速が軽減したと考えられた。血管内の高速血流は,カラードプラでは折り返し現象で乱流様に観察され,狭窄血流や動脈血流との鑑別が必要で,パルスドプラによる時相も考慮した波形分析や体位変換が有効である。