9:00 AM - 9:56 AM
[O-30-2] 傍腎動脈腹部大動脈瘤に対する一時バイパス下大動脈置換術
Keywords:abdominal aortic aneurysm, temporary bypass
【はじめに】近年,EVARの導入により,腹部大動脈瘤(AAA)に対するopen surgeryにおける傍腎動脈腹部大動脈瘤(pararenal AAA)の割合は増加している。pararenal AAA手術においては,大動脈遮断時の腎保護法が問題となる。今回われわれは,一時バイパス下に腎動脈再建を伴う大動脈置換術を施行した3症例について検討・報告する。【結果】平均年齢は62.3(58-70)歳。全例で術前腎機能障害は認めなかった(Cre 0.60-0.86 mg/dl)。動脈瘤は,嚢状瘤1例,紡錘状瘤2例で,炎症瘤を1例に認めた。再建に使用した人工血管はすべてDacron graftであり,一時バイパスには8mm,腎動脈再建は6mm Dacron graftを使用した。一時バイパスの流入動脈は腋窩動脈(右2例,左1例),流出動脈は総腸骨動脈2例,外腸骨動脈1例であった。遮断部位は,腹腔動脈上大動脈遮断2例,腎動脈上大動脈遮断1例で,腎動脈再建は,両側2例,片側1例(左)であった。平均手術時間は524(393-733)分,平均出血量1356(350-2400)g,平均輸血量(RCC)5.3(0-10)単位であった。術中脾臓の被膜損傷を1例に認めた。片側腎動脈再建を施行した1例に術後軽度Creの上昇を認めたが,全例で血液透析は不要であった。術後,腹腔動脈上遮断を要した1例で一過性の肝機能障害を認めた以外に,大きな合併症は認めなかった。【考察・結語】一時バイパス下にあらかじめ腎動脈を再建することにより,確実な腎保護のもと大動脈置換が施行でき,術後経過も良好であった。本術式は,手術手技は煩雑であり,症例の選択は必要であるものの,確実な腎保護のもと,血行再建が施行可能であり,pararenal AAAに対する有効な術式と考える。