第55回日本脈管学会総会

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一般演題(口述)

その他1

Fri. Oct 31, 2014 1:00 PM - 1:40 PM 第5会場 (201会議室)

座長: 池澤輝男(総合上飯田第一病院 外科), 森景則保(山口大学医学部 第一外科)

1:00 PM - 1:40 PM

[O-33-3] 上腕静脈表在化による透析用内シャントの検討

林田恭子, 奥村悟, 土肥正浩 (社会医療法人誠光会 草津総合病院 心臓血管外科)

Keywords:brachial vein, blood access

透析用内シャント手術が困難な症例,中でも前腕,上腕ともに表在静脈が使用できない症例に対し,上腕静脈表在化によるシャント作製を行ってきた。成績と問題点について検討したので報告する。対象は,2008年4月から2014年3月までに当科で施行した内シャント手術症例106例中,上腕静脈表在化シャント手術を行った9例(平均年齢76.2±7.4歳,男女比4:5,平均観察期間23.5±23.3ヶ月)。3例に悪性腫瘍の既往があり,5例に末梢動脈疾患,2例に糖尿病を合併していた。3例は抗血小板剤2剤を服用し,1例は抗凝固療法を行っていた。手術は,上腕動脈に伴走する上腕静脈2本のうち1本を用いてシャントを作製し(吻合径6mm,側々吻合),上腕動脈とシャント血管を表在化した。術後合併症は,初回穿刺後のシャントの仮性瘤が1例,IVRを要したシャント不全が4例であった。他の2例は,シャントは閉塞したが全身状態の悪化等の理由でIVRを行わなかった。シャント不全に至るまでの期間は平均5.6±4.5ヶ月であった。術後6ヶ月,1年の一次開存率は57.1%,38.1%,二次開存率は68.6%,45.7%であった。初回IVR時の血管造影所見は,穿刺部の狭窄が3例,腋窩静脈の狭窄が1例であった。1年に9回IVRを行った症例では,当初は穿刺部の狭窄であったが,より中枢側に狭窄を認めるようになり,最終的に,腋窩静脈の末梢から完全に閉塞した。上腕静脈表在化は,transpositionによるシャント作製の術式として選択肢となり得る。穿刺部の狭窄はIVRで治療可能であった。ただし,中枢側,特に腋窩静脈に狭窄や閉塞を来した場合は,同側にブラッドアクセスを設けることが困難となる。よく検討した上で適応とすべきと考えた。