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[P-13-3] 腕頭動脈Malperfusionを伴うDeBakey III型逆行性解離に対し緊急TEVARが有効であった一例
キーワード:Aortic dissection, TEVAR
DeBakeyIII型逆行性解離の場合当院では造影CTで上行大動脈解離腔が造影されなければ保存的治療を行っている。しかしMalperfusionなどにより緊急処置が必要となる場合もある。今回われわれは腕頭動脈Malperfusionを伴うDeBakeyIII型逆行性解離に緊急TEVARを行い良好な結果を得たので報告する。症例68歳男性,突然の胸背部痛,下肢のしびれでドクターヘリにより搬送。造影CTでDeBakeyIII型逆行性解離を認めた。上行大動脈の解離腔は造影されずEntryは鎖骨下動脈分枝後の大弯側に認めた。腕頭動脈,上腸間膜動脈,右総腸骨動脈は血流途絶しており腹腔動脈,左総腸骨動脈も狭窄していた。MRIで脳梗塞はないものの,右総頸動脈は閉塞しており,脳SPECT検査で右脳半球の血流が低下していた。また腹痛を伴う下血もあり腸管虚血も疑われた。SPECT後血圧低下し意識混濁,左半身麻痺が出現した。脳外科的には血行再建の適応はないため,TEVARでEntry閉鎖を行うこととした。手術は全身麻酔下に左大腿動脈アプローチで遠位弓部大動脈に鎖骨下動脈を閉塞させないようにステントグラフトを挿入した。ステント挿入後も右足の血流不良なためF-F Bypassを追加した。術後は閉塞していたすべての血管で順行性の血流が回復し,F-F Bypassも閉塞した。Entryはステントにより閉鎖したものの上行大動脈の解離腔が血栓化せず残存したため第14病日上行大動脈人工血管置換術を追加した。その後の検査で進行性直腸癌が発見され約一カ月後に直腸低位前方切除術を行った。その後の経過は良好である。脳血流の障害を伴うDeBakeyIII型逆行性解離には緊急TEVARも選択肢として考慮すべきと考える。