第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

感染その他

2014年10月31日(金) 13:40 〜 14:28 第6会場 (第1練習室)

座長: 小泉信達(東京医科大学 心臓血管外科)

13:40 〜 14:28

[P-20-3] 細菌性髄膜炎で発症した肺炎球菌による感染性腹部大動脈瘤の1手術治験例

川谷洋平, 林裕次郎, 伊藤雄二郎, 中村喜次, 村上貴志, 堀隆樹 (千葉西総合病院 心臓血管外科)

キーワード:infected aneurysm, Streptococcus pneumoniae

肺炎球菌が起炎菌となる感染性腹部大動脈瘤は稀であり,致死率も高い。さらに,髄膜炎が初発症状となる感染性大動脈瘤の手術例の報告はほとんどみられない。今回,肺炎球菌による細菌性髄膜炎の診断にて加療中,CTから感染性腹部大動脈瘤と診断し手術を施行した症例を経験した。65歳男性,意識障害,下肢の脱力,腰痛を訴えて受診した。髄液所見より細菌性髄膜炎と診断し,血液培養にて肺炎球菌を検出した。肺炎球菌による細菌性髄膜炎と診断し,メロペネムにより加療した。神経学的所見は改善をみたが,経過観察のためにCTを施行したところ,入院時41*47mmの腎下部大動脈瘤を認めていたものが,第9病日に最大径56*66mmへと急速に増大していた。動脈瘤の嚢状の増大,周囲の脂肪織濃度上昇と炎症像を認めた。感染性動脈瘤と診断し,緊急人工血管置換術を施行した。手術所見では,血管壁は肥厚し周囲組織と癒着していた。血管壁からは白色混濁した膿状の液体の流出を認めた。可及的に感染を疑う組織を切除し,Y型人工血管置換と右内腸骨動脈再建を行った。右胃大網動脈をpedicleとして大網を人工血管周囲に充填した。術後は熱型・採血上の炎症反応は改善した。術後1日目に抜管,5日目に経口摂取を再開,6日目にICUを退室した。術中組織培養からは菌は検出されなかったが,多量の白血球を認めた。感染性腹部大動脈瘤の診断と一致する所見であった。細菌性髄膜炎で発症した肺炎球菌による感染性腹部大動脈瘤に対して手術を施行した症例を経験した。文献的考察を加えて報告する。