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[P-5-1] 下血で発症したcoagulopathy併存巨大AAAに対する開腹手術の経験
キーワード:coagulopathy, abdominal aortic aneurysm
症例は81歳男性。1週間前より黒色便,3日前より息切れやめまいがあり近医受診。既往に狭心症があり,冠動脈ステント治療を受けており,抗凝固薬内服中であったが,上部消化管内視鏡検査を施行。急性胃粘膜病変と診断されたが,他の出血源検索目的に腹部CT検査が行われた。巨大な腹部大動脈瘤(最大短径90mm)を認め,当院へ搬入。血液検査でHb 5.3g/dl,Plt 2000μl,PT-INR1.2,Fibrinogen 196 mg/dl,Dダイマー 6.51μg/mlと極度の血小板低下を伴う急性期DIC(線溶亢進型)であった。腹部大動脈瘤は未破裂であり,血圧も保たれていたため,輸血治療を先行した。濃厚血小板20単位と赤血球濃厚液8単位投与したが,Hb 8.0g/dl,Plt 19000μlと貧血の改善に比べ血小板値の上昇はわずか。背部などには皮下出血斑が拡大し,入院翌日に,開腹人工血管置換術を施行。血小板20単位追加投与してから手術室に入室。剥離に伴う出血なく,腹部大動脈瘤に到達。腹部大動脈瘤内は,壁在血栓が少量のみで,瘤壁は菲薄していた。人工血管置換直後に,濃厚血小板20単位の他,赤血球濃厚液4単位,凍結血漿6単位を投与し,止血を得た。瘤切除効果の期待通り,低血小板血症は,10万μlまで一過性に上昇したが,再び,3000μ程度まで下がった。経過中に後腹膜血腫の増大を認めたが,徐々に吸収傾向となり,貧血の進行もなかった。合併症なく軽快退院し,現在も外来通院中である。20000μl程度の低血小板症で推移しているが,出血症状なく,DIC再発もなく経過中である。