3:20 PM - 3:56 PM
[P-5-2] 人工膝関節置換術における術前抗凝固療法による術後早期深部静脈血栓症予防の試み
Keywords:deep venous, preoperative anticoagulant therapy
【目的】整形外科領域の人工膝関節置換術(TKA)の合併症である深部静脈血栓症(DVT)は肺塞栓に繋がる原因とされている。さらにその発症は術後早期に多いことが知られている。目的は術前に抗凝固療法を行うことが術後早期のDVT発症予防に寄与するかを検討することである。(倫理委員会承認)【対象・方法】TKA術前に本研究に同意し抗凝固療法を施行した13例を対象とした。男性3例,女性10例,平均年齢75,3歳であった。方法は手術2時間前にエノキサパリン2000単位を投与し,術前,術後1日(PO1),PO2に下肢超音波検査およびHb値を,術前,PO1にD-dimer(D-d)値測定を行なった。PO1およびPO2のDVTの発生率,PO1のD-d値を術前抗凝固療法施行群(P群)と術前抗凝固療法を施行していない過去自験例576例(N群)と比較した。【結果】PO1-2のDVT陽性率:P群1例(7.7%),N群13.8%であった。D-d値(ng/ml):PO1ではP群10.3,N群68.8であり,PO2ではP群5.0,N群8.7であった。術前からのHb値の低下量(g/dl):PO1ではP群2.8,N群1.6であり,PO2ではP群3.0,N群1.8であった。P群において重篤な副作用,輸血症例は認めなかった。【考察】欧米や韓国などではDVT高リスク症例に対し,術前に抗凝固を行うことが認められている。術前抗凝固療法は早期DVT予防には有用である一方,出血などの危険性を高める懸念がある。本検討では術前投与においてD-d値上昇を抑制しており血栓傾向を抑制していること,さらに術後早期のDVT発生を抑制する可能性が示唆された。Hb値は若干多くなり,出血には十分な注意は必要であるが,本症例では重篤な症例は認めなかった。今後,症例を重ね再検討を行う予定である。