第55回日本脈管学会総会

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シンポジウム

ここまで進化した脈管の基礎研究

Thu. Oct 30, 2014 9:00 AM - 10:30 AM 第3会場 (202会議室)

座長: 吉栖正生(広島大学大学院医歯薬保健学研究科・研究院 心臓血管生理医学教室), 下川宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野)

9:00 AM - 10:30 AM

[SY-2-5] 大動脈瘤病態におけるメカノトランスダクション機構の解明

吉村耕一1,2, 山下修1, 上田晃志郎1, 原田剛佑1, 森景則保1, 濱野公一1 (1.山口大学 器官病態外科学, 2.山口県立大学 健康福祉学研究科)

Keywords:aortic aneurysm, mechanotransduction

ステントグラフト治療後に大動脈瘤の退縮が促進されることから,メカニカルストレス応答が瘤の炎症病態維持に重要であると推察される。したがって,メカノトランスダクション機構を解明することは大動脈瘤薬物療法の新規開発に繋がると期待されるが,まだ実現には至っていない。我々は以前c-Jun N-terminal kinase(JNK)が大動脈瘤の炎症病態を中心的に制御するシグナル分子であることを発見し,JNK阻害薬がマウス大動脈瘤モデルの治療に有効であることを実証した。これを基盤として,本研究では大動脈瘤壁細胞のメカノトランスダクション機構の役割を検討した。まず,周期的伸展刺激により培養血管平滑筋細胞並びにマクロファージのJNKが活性化した。特に伸展刺激後の血管平滑筋細胞では,Focal adhesion kinase/JNK/ペリオスチン系の活性化とそのポジティブフィードバックにより,下流のMonocyte chemoattractant protein-1やMatrix metalloproteinasesの分泌増強が制御されていた。また,伸展刺激後の血管壁細胞で活性化するJNKはJNK1ではなくJNK2アイソフォームであった。JNK2活性化はマクロファージからのInterleukin-1分泌を促進する一方で,血管平滑筋細胞におけるLysyl oxidase発現を抑制していた。実際,JNK1遺伝子欠損マウスや野生型マウスに比べて,JNK2遺伝子欠損マウスではモデル大動脈瘤の発症が顕著に抑制された。以上から,JNK2を中心とするメカノトランスダクション機構は大動脈瘤薬物療法の有望な治療標的と考えられる。さらに本講演では,大動脈瘤領域における基礎研究の進歩をいかにして創薬に結びつけるかについて,現状の問題点を分析し今後の展望について言及したい。