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[SY-2-6] 大動脈瘤形成および血管石灰化実験モデルの確立とその応用
キーワード:aortic aneurysm, vascular calcification
大動脈瘤形成の分子機序の解明と,その進展予防戦略の確立は喫緊の課題である。これまで,マウス動脈瘤モデルとして「エラスターゼ誘発型」,「アンジオテンシンII 誘発型」が確立されてきた。それに加えて最近,青木らが紹介した「塩化カルシウム誘発型」モデルは,大動脈外膜側からの一回のみの塩化カルシウム処置で瘤形成が進展するため,薬物治療のスクリーニングにも非常に適している。我々は同モデルをblush upしたモデルを用いて,Jun Kinaseを介するMMP9の亢進に,その抑制因子であるTIMP-1の亢進がともなうことを見い出し,両者のバランスを維持することが,新たな薬物療法のターゲットとなりうることを示した。また,一回のみの塩化カルシウム処置が何故,瘤形成発症のトリガーになるかについても,重要な知見を得ている。更に近年,脈管疾患治療に大きな影響を及ぼす血管石灰化の分子機序の研究に多くの関心が集まっている。我々は骨代謝関連遺伝子欠損マウスに対して高リン食を負荷し,活性化VItD注射を行うことにより,血管石灰化を任意の時点で発症させることが可能な動物モデルを開発した。その解析により,血管石灰化の際に骨型のアルカリフォスファターゼが活性化していること,血管平滑筋細胞から進展する病変の電顕像など新たな知見が得られた。現在,これらのモデルを用いて,大動脈瘤形成および血管石灰化の詳細な分子機序の解析および血管作動物質や代謝治療薬の薬効の評価とその作用機序の解析を進めている。