日本女性骨盤底医学会 第25回学術集会

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一般演題

解剖 生理 画像

解剖・画像

Sat. Aug 5, 2023 1:15 PM - 1:45 PM Hitotsubashi Hall (Japan Education Center Level 3)

座長:室生 曉、西林 学

1:20 PM - 1:25 PM

[1A20P] 肛門挙筋の支持における内閉鎖筋の重要性

○室生 暁1、二村 昭元2、井原 拓哉2、近澤 研郎3、中澤 正孝4、秋田 恵一1 (1. 東京医科歯科大学 臨床解剖学分野、2. 東京医科歯科大学大学院 運動器機能形態学講座、3. 自治医科大学附属さいたま医療センター 産婦人科、4. 東京有明医療大学 保健医療学部)

Keywords:骨盤底筋、股関節、筋膜

【目的】近年、股関節運動機能と骨盤底機能の関連を示唆する報告が見られる。股関節周囲筋と骨盤底筋が構造的に近接するのは、内閉鎖筋と肛門挙筋との接触部である。従来、内閉鎖筋と肛門挙筋は肛門挙筋腱弓という曲線状の構造を介して付着するとされてきた。しかし、そのような限局的な接触だけでは内閉鎖筋と肛門挙筋の機能的な連関を説明できない。そこで、内閉鎖筋と肛門挙筋の接触部の構造を明らかにすることを目的に研究を行った。
【方法】解剖実習体23体(男性12体、女性11体、平均77.1歳)を用い、肉眼解剖学的解析と組織学的解析を行った。
【結果】肛門挙筋の外側には閉鎖筋膜に覆われた内閉鎖筋が見られ、肛門挙筋の筋束およびそこからつながる腱が内閉鎖筋の内側面を覆う閉鎖筋膜に幅広く接している様子が観察された。閉鎖筋膜は、組織学的には膠原線維による明瞭な膜であった。肛門挙筋の上を覆う筋膜と下を覆う筋膜はそれぞれ異なる位置で閉鎖筋膜に付着しており、その間の広い範囲で内閉鎖筋と肛門挙筋とを隔てる筋膜は閉鎖筋膜のみであった。すなわち、閉鎖筋膜は内閉鎖筋の内側面を覆う筋膜であると同時に、肛門挙筋の外側面を覆う筋膜でもあることがわかった。さらに、肛門挙筋の筋束の多くはその起始において閉鎖筋膜に付着しており、付着部では肛門挙筋の腱が閉鎖筋膜に癒合していた。
【結論】内閉鎖筋と肛門挙筋は筋膜を共有しながら、従来想定されていたよりも幅広い範囲で接していることがわかった。内閉鎖筋の動きが閉鎖筋膜を介して肛門挙筋にダイナミックに作用することで、肛門挙筋の挙上を支援し、骨盤内臓の支持に寄与すると考えられる。