日本女性骨盤底医学会 第25回学術集会

講演情報

一般演題

手術(全般)

治療後のトラブル症例

2023年8月5日(土) 16:35 〜 17:10 一ツ橋ホール (日本教育会館 3F)

座長:草西 洋、嘉村 康邦

17:05 〜 17:10

[1A43P] 放射線性腸炎による小腸穿孔で後腹膜腫瘍を形成し膣穿破した1例

○鎌田 陽介1、松本 辰也1、小泉 範明1、藤木 博1、阪倉 長平1、草西 洋2 (1. 明石市立市民病院 外科、2. 明石市立市民病院 産婦人科)

キーワード:放射線腸炎、骨盤内膿瘍

症例は70歳女性。主訴は外陰部痛と汚染帯下。20年程前に他院婦人科にて子宮頸癌治療(NAC、RH、手術、術後CRT)後であった。1年程前から外陰部痛が出現、増悪するため前医受診し、当院産婦人科に紹介となった。下部内視鏡検査で横行結腸に2か所進行癌を認め当科紹介となった。CTでは横行結腸癌のリンパ節転移や遠隔転移は認めず、右水腎症、右尿管拡張、膀胱気腫、後腹膜膿瘍を認めた。小腸造影で骨盤腔内の小腸に狭窄を認め、そこから腸管外に、さらに膣を経由して体外に造影剤の漏出を認めた。小腸造影後のCTでは、後腹膜膿瘍形成、膿瘍の右尿管から膀胱及び膣への穿通を認めた。横行結腸癌(同時性二重癌)、小腸穿孔、後腹膜膿瘍、膣・右尿管・膀胱穿破と診断した。小腸穿孔は既往の放射線治療によるものと考えられた。横行結腸癌に対して手術治療を計画し、並行して小腸穿孔に対しても治療を行った。高度癒着の可能性や放射線照射後の小腸吻合のリスクを考慮し、小腸切除やバイパスは困難と判断し、腹部への外瘻化を計画した。術前に膣の瘻孔から膿瘍内にドレーンを留置し、手術を施行した。まず腹腔鏡下に横行結腸切除術を施行した。術前の予想通り、骨盤腔内は癒着した小腸が一塊となっていた。腹腔鏡操作後、恥骨上を小切開し、そこから膿瘍内にドレーンを留置し手術を終了した。術後5日目に経膣ドレーンを抜去した。その後経過は良好であった。外陰部びらんも改善し、経皮ドレーン及び尿バルーンを月に1回程度の交換で、外来にてフォローできるようになった。今回我々は、放射線性腸炎による小腸穿孔で後腹膜腫瘍を形成し膣穿破した1例を経験した