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[2A20P] 膀胱全摘後前方小腸瘤の発症病態に関する組織学的検討
Keywords:膀胱全摘後、前方小腸瘤、経腟メッシュ手術
【目的】当院では4年間の間に、膀胱全摘部位からの骨盤臓器脱、いわゆるAnterior Enterocele (AE)を7例経験した。AEは一般的な骨盤臓器脱と異なり、腟から小腸が腹腔外に脱出し重篤な状態となることがある。我々はAEの発症原因は腟壁の伸展・下垂だけでなく、その腟壁自体の離開(Dehiscence)から生じていると仮定し、明らかにすることを目的とした。 【方法】2019年7月から2023年5月の間に手術療法となったAE 7例の患者背景と下垂した腟壁の組織学的検査から検討を行った。 【結果】患者背景は、平均年齢72歳、BMI 22.2、原疾患は全例膀胱癌でロボット支援下もしくは腹腔鏡手術後であった。膀胱全摘後より症状出現までの期間が3ヶ月以内の早発型が3例あり、3ヶ月以上経過し症状の出現した遅発型が4例あった。組織学的には、早発型のうち2例は脱出部位の腟壁の重層扁平上皮が欠損しており、1例は腟壁が脆弱で組織学的検査が不可能であった。遅発型の4例の下垂した腟壁は全例重層扁平上皮を認めた。 【結語】早期に発症した症例は重層扁平上皮を欠いており、発症病態として腟壁の離開(Dehiscence)から下垂が生じたと考えた。一方、遅発型は全例下垂腟壁の重層扁平上皮は保たれており、一般的な骨盤臓器脱と同様に腟壁の伸展(Stretch)と周囲の支持組織の損傷が下垂の原因と考えた。Dehiscenceタイプに小腸脱出のリスクが高いと考えている。発症時期と病態との関連は今後さらなる検討が必要だが、早期に発症したケースはDehiscenceタイプの可能性が高く、治療にあたってはより注意が必要である。