日本女性骨盤底医学会 第25回学術集会

講演情報

講演取消

一般演題

病態(全般)

珍しい症例・難渋した症例

2023年8月6日(日) 15:00 〜 15:35 第1会議室 (日本教育会館 8F)

座長:安井 智代、武井 実根雄

15:05 〜 15:10

[2B26P] 骨盤臓器脱においてstage4腟後壁脱の内容が卵巣腫瘍であった一例

○大井手 志保1、林 篤正1、野村 昌良1、大渕 朝日1、永榮 美香1、常盤 紫野1 (1. 亀田総合病院 ウロギネ・女性排尿機能センター)

(緒言)骨盤臓器脱のうち後壁脱の腫瘤内容は通常直腸や小腸であり、卵巣腫瘍の報告はほとんどない。本症例では、stage4の後壁脱の腫瘤内容物が非壊死性の良性成熟嚢胞奇形種であった症例を経験した。
(症例)82歳女性、腟の高度膨隆感を主訴に来院し、診察にて褥瘡を伴うStage4の後壁優位の脱を認めた。内診で用手的に腹腔内に還納でき、超音波にて子宮に接して6.5cmのisoechoicな骨盤内腫瘤を認めた。CT、MRIでは腟外に大きく脱出した腫瘍は通常の卵巣位置よりもかけ離れていたが、内診及び画像所見より成熟奇形腫の可能性が高い腹腔内腫瘤と考えた。SCC含む腫瘍マーカーは陰性であった。腹腔鏡手術所見では、ダグラス窩が腟後壁に深く嵌入し、ダグラス窩に埋没した子宮と右付属器を持ち上げたところ、右付属器は伸展した卵管間膜の高さで540度捻じれていたが、卵巣堤策はねじれなく伸展しており、壊死は認められなかった。腹腔鏡下仙骨腟固定術、子宮上部切断術、両側付属器摘出術を施行し、右卵巣腫瘍の病理所見は壊死所見のない成熟嚢胞奇形腫であった。術後経過は良好である。
(考察)高度腟後壁脱の内容物として卵巣腫瘍の報告は稀である。
卵巣腫瘍の重みで後壁脱先端のダグラス窩に長年かけて嵌頓したために右卵巣堤索、固有索が腟外に卵巣が脱出する程度まで進展したと考えられた。また卵巣堤策、卵巣固有策の進展は捻れを伴わず血流が保たれていたため壊死所見を認めなかった。
(結語)高度後壁脱の場合、婦人科的内診及び画像診断を併用し、脱の腫瘤内容として卵巣腫瘍や腹腔内病変の有無を確認することが重要である。