第69回日本病院学会

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シンポジウム

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Thu. Aug 1, 2019 4:30 PM - 6:00 PM 第3会場 (中ホールA)

座長:
岡留 健一郎(一般社団法人日本病院会 副会長/済生会福岡総合病院 名誉院長)
中井 修(一般社団法人日本病院会 常任理事/国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 病院長)

 2019年4月より「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が施行された。これにより労働基準法は改正され、時間外労働の上限は1ヶ月45時間、年360時間とされた。医師についてはその労働の特殊性を鑑み、適応が5年間猶予され、施行後の時間外労働の上限も特例を設けることで、「医師の働き方改革に関する検討会」で検討されてきた。その結果、医師については、特例として1ヶ月100時間、年960時間が上限と定められた。さらに特例の特例として、医療機関を特定した上で地域医療確保暫定特例水準が設けられ、1ヶ月100時間、年1860時間が上限となった。同時に追加的健康確保措置として連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル9時間の確保・代償休息のセットが特例には努力義務、特例の特例には義務として課されることになった。また、初期研修医、後期研修医、高度な技能を研修する医師の時間外上限規制については医療機関を特定して、年1860時間まで可能とされたが、この特例の特例の上限年1860時間の妥当性については医療界内外から批判もあり議論が多いところである。 
しかし、現在、年間時間外勤務1860時間超えの医師がいる医療機関は病院の約3割、大学病院の約9割、救命救急センター機能を有する病院の約8割とされているので、これらの病院では2024年4月までに、時間外1860時間を超える医師を0にしなければ罰則が科せられることになる。5年間でさまざまな方策をとり、全力で労働時間短縮に取り組むことがすべての医療機関に求められている。本シンポジウムの目的はその課程で直面する諸問題につき、議論することである。 
厚労省医政局・労働基準局安里加奈子氏には、宿日直、応召義務、兼業の労働時間、労働と自己研鑽の判別など直接的労働時間短縮につながる規制解釈について、および地域医療確保暫定特例および集中的技能向上水準の対象医療機関の特定にかかる枠組みについて、そして勤務医不足、地域偏在の解消をはかる抜本的なプランについてなど医事法制、医療政策を遂行する立場から論じていただく。 
塩谷泰一氏には日本病院会地域医療委員会として、これまでも2回にわたるアンケート調査から地域医療の危機を訴えられてきたが、今回は医師の働き方改革に焦点をあてたアンケートからこれから地域医療に生じうる諸問題につきまとめていただき、その解決として病院、医療機関のみではなく、地域全体での取り組みの必要性にも論じていただく。 
牧野憲一氏には医師確保、労働時間管理適正化、タスクシェアリング、病院総合医、AI導入など、地域の中核病院が働き方改革と地域医療確保の両立のために先進的に取り組まれて苦心されている現況を論じていただく。 
このシンポジウムにおいて5年後に医療の水準を落とすことなく、真の勤務医の働き方改革が達成できるようにあらゆる問題を提起し解決法について論議したい。

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Thu. Aug 1, 2019 4:30 PM - 6:00 PM 第2会場 (特別会議場)

座長:栗原 正紀(一般社団法人日本病院会 理事/一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 理事長・院長)

 我が国は急速に超高齢・少子化そして人口減少社会を迎えている。2025年には団塊の世代が75歳以上となり、今まで経験したことのないような多くの後期高齢者が誕生する。後期高齢者は前期高齢者に比較して明らかに有病率・受療率や要介護者の割合が高いことは周知の如くであり、実際に多くの急性期病院では入院患者に占める高齢者(65歳以上)の割合は70%を越えるようになっている。このため疾病構造も大きく変化している。長崎救急医療白書によると救急搬送件数は年々増加し、しかもその増加の主な要因は内因性疾患による高齢者搬送で、殊に主な救急疾患である肺炎や脳卒中では大腿骨頸部等骨折同様に高齢者が80%以上を占めている。この意味で今や、可及的・速やかに高齢者医療の体系化・整備が求められるところである。 
人は加齢に伴って生理学的機能が低下する。結果、高齢者は潜在的低栄養状態、運動機能の低下による活動範囲の狭小化、精神的には自信を喪失し、孤独・孤立化、記銘力(認知機能)低下などが起こってくる。このため高齢者は容易に日常生活機能の低下を来たし、打撲・腰痛・風邪等によって徐々に廃用が加わり、閉じこもりから寝たきり(要介護状態)になってしまうという可能性を持っている。この様な高齢者の特徴を整理し、昨今では要介護状態になる前で、何らかの介入によって生活機能の維持・向上を図ることができるであろう状態像を指す概念として、新たに〇フレイル:「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態である」、或は〇サルコペニア:「加齢や疾患により、筋肉量が減少することで、握力や下肢筋・体幹筋など全身の筋力低下が起こること、または、歩くスピードが遅くなる、杖や手すりが必要になるなど、身体機能の低下が起こること」が提唱されている。地域生活における啓発や介護予防・支援(サロン)等によって健康寿命の延伸を図ることの重要性が挙げられている。 
一方、このような可能性を持つ高齢者が何らかの原因(病気や怪我)によって入院すると「環境の変化や治療のための絶対安静(活動制限)あるいは投薬(ポリオファーマシーの問題等)などの影響によって容易且つ急速に廃用となり、合併症を併発して入院が長期化し、ついには寝たきりになってしまう」ことも指摘されている。これは『高度に進歩した臓器別専門治療が生活に繋がらない』ことを意味し、「生活に繋がらない地域医療とは何ぞや!」という地域医療における重大な課題が問われている。 
このため超高齢社会における、これからの病院医療は「社会生活から隔絶された世界で安静を絶対条件として行っていた治療」から、「可能な限り早く生活に戻るという、生活を積極的に視野に入れた医療のあり方」へと、パラダイムシフトが重要である。その実現には多くの専門職によるチーム医療が前提となる。そして医療機能の分化・連携によって、臓器別専門治療が着実に地域生活に繋がるような地域完結型医療提供体制の構築が本質的課題となる。 
この意味で各専門職は自らの知識・技術の向上を図ると共に、チームの一員として互いを知り、尊重し、そしてコミュニケーションを大切に、情報を共有、共に統一された目標に向かって、努力することが求められる。 
本シンポジウムでは医師・看護師・薬剤師そして管理栄養士の方々にこれからの高齢者医療の課題などについて発表いただき、専門職としてチーム医療に如何に寄与すべきかの方向性などを議論し、高齢者に対するこれからの医療のあり方について整理できたらと考える。

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Thu. Aug 1, 2019 4:30 PM - 6:00 PM 第4会場 (中ホールB)

座長:
万代 恭嗣(一般社団法人日本病院会 副会長/医療法人社団大坪会 北多摩病院 病院長)
安藤 文英(一般社団法人日本病院会 常任理事/医療法人西福岡病院 理事長)

 現今のめまぐるしいほどの医療政策・制度改正、とくに病院病床数を対象とした地域医療構想や医師の働き方改革の行方そして間近に迫った消費税率増とそれらに連動する診療報酬改定など急速な変化のうねりの中、中小病院の開設者管理者にとっては落ち着かない日々を過ごされているのではないだろうか。「病院ビッグバン」とも表しえるほどのこれら政策や制度に通底するものは何であるのか。そのターゲットは我々中小病院ではないのか、との疑心暗鬼も生じよう。 
 私ども中小病院委員会では、会員の50%を占める1,200余病院(全国5,800余)の医療の質と経営の向上に資することを目的に過去20年間、この病院学会でのシンポジウム開催をはじめさまざまな活動を行ってきた。地方都市で18回にわたり開催してきた情報交換会では、各地で頑張っておられる2~3の中小施設病院長などに御登壇いただき、さまざまな努力、工夫の成果を御紹介いただいてきた。それら施設の今日の成功にいたる足跡であり、毎回盛況で開催の実は上がったものと評価する。一方で、失敗例からも学べる事は多いのではないか、との思いもある。このような観点から新しく組織された中小病院委員会は、これまでの活動を振り返りつつ、以下のように新機軸を打ち出す方針を定めた。 
即ち、外部の助言者として病院の事情に精通されている立場から、客観的で忌憚の無い御意見や知見を得ることも大いに意義のあることと考え、中小病院の今後について、誤解を恐れず、実情を踏まえた率直なお考えをお聞かせいただく場の提供である。今回は、私どもの周辺で密やかに行われている病院の吸収と合併についてその実情を知る場を設けることとした。このM&Aについては事の性質上、一切が完了してからその事実が知らされるのは仕方が無いにしても、衝撃的である。その経緯についても後に語られることも無く、いつの間にか周辺の医療提供体制や、医療環境などの変化の余波を受けたり憶測を招くこととなる。地域医療構想調整会議議論への影響もあろう。とりわけ、仲介を担う業者がいかなる理念や経緯をもってその場に登場したのか、注視すべき事ではなかろうか。更には、多くの病院を傘下に置く病院団体には、実情を知り分析し、そのエッセンスを会員施設に情報提供する役割が在るものと思われる。かかる諸点を鑑み今回のシンポジウムでは、諸事情に精通されているお二人をお招きし、まずはお話を窺う場とすることとした。「地域における中小病院の役割と収益改善方策」を医療総研株式会社代表取締役社長、公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会 副会長 伊藤 哲雄 様に、「病院の吸収合併(M&A)の体験から」を西岡税理士事務所・行政書士事務所長、一般社団法人医業経営研鑽会会長 西岡 秀樹 様、である。時間の許す限り、質疑応答も行い、身のあるものとしたい。 
 尚、開催結果を踏まえ今後の恒常化ないし有料研修会とする途についても模索する。

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Thu. Aug 1, 2019 2:30 PM - 4:00 PM 第5会場 (107会議室)

座長:
山口 武兼(公益財団法人東京都保健医療公社 理事長)
牧野 憲一(一般社団法人日本病院会 常任理事/旭川赤十字病院 院長)

 身体科の医療においては、入院医療中心から地域生活中心へ、高齢者も住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるように、「住まい・医療・介護・予防・生活支援」が一体的に提供されるよう、地域包括ケアシステムが大きく変貌しています。一方で、精神科医療は大きく出遅れているとの反省から、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」が提言され、いくつかの施策が統一感を持てないまま実施に移されています。
 高齢者を対象とした地域包括ケアシステムでは、市区町村が主体になって日常生活圏域(中学校区)を守備範囲にシステムが構築されていますが、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムでは、各都道府県の障害保健福祉圏域ごとに連携をとる方向で、とても一人ひとりに目が行き届く状況ではありません。精神障害者も高齢の認知症者も同じように、日常生活圏域における「まち」の中でケアされる必要があります。
また、経済的な問題からは、フィンランドの社会・保健医療ケア基礎資格職ラヒホタイヤ(Practical Nurse)のような多機能な職種の育成を考えてみる必要もあるでしょう。さらには、発展し続けているICT(情報通信技術)や、将来的にはAI(人工知能)の活用も視野に入ってきます。
 このシンポジウムでは、「精神障害(認知症含む)にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に向けて、将来を見据えた夢のある議論を展開したいと思います。

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Fri. Aug 2, 2019 1:30 PM - 3:00 PM 第3会場 (特別会議場)

座長:島 弘志(一般社団法人日本病院会 副会長/社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院 病院長)

来年度の診療報酬改定に向けて、既に中央社会保険医療協議会での議論の内容とスケジュールが出されており、活発な討議が行われているところですが、入院医療等の調査・評価分科会で重症度、医療・看護必要度のワーキンググループとDPCのワーキンググループの両方に所属し、御活躍中の牧野憲一先生からは、急性期医療の立場からお話を頂きます。次に仲井培雄先生からは、地域包括ケア病棟協会の会長として、地域包括ケア病棟のアンケート調査に基づく提言を行って頂きます。厚生労働省の木下栄作先生には中医協の8月末までの第1ラウンドの議論について御発表頂きます。先生方の御話によって、2020年の診療報酬改定の方向性が見えてくると思います。沢山の御来場をお待ちしております。

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Fri. Aug 2, 2019 3:00 PM - 4:30 PM 第3会場 (特別会議場)

座長:
牧野 憲一(一般社団法人日本病院会 常任理事/旭川赤十字病院 院長)
中山 和則(公益財団法人筑波メディカルセンター 筑波メディカルセンター病院 副院長兼事務部長)

 今、みなさんの病院の経営状況はいかがでしょうか。そして2035年もその地で医療を継続している絵は描けているでしょうか。2018年度診療報酬改定を受け、日本病院会をはじめとする三病院団体が合同で実施した「病院経営定期調査」では、約6割の病院が赤字運営を強いられ、特に急性期病院では「増収減益」の傾向が強いという結果が示されました。少子超高齢社会が招く社会保障費の増嵩に対応するため、税制のあり方も含めた社会保障制度改革が動き出し、本格的な医療制度改革が進み、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定、各都道府県の医療計画、高齢者福祉・介護保険事業計画の再編によって、病院を取り巻く流れが大きく変わろうとしています。確かに2018年度診療報酬改定は、単なる点数の増減ではなく、病院機能をどのように変えていくかという選択が迫られ、まさに地域医療構想に関連した内容が色濃く示されていたと感じます。更に「働き方改革」という大きなテーマが付加され、医療の根幹である医療従事者確保に関わり、このテーマの対応を誤ると地域医療は崩壊することも懸念されます。既に示された地域医療構想の図柄とこの新しいテーマをどのように組み合わせて自院の将来図を描くのか、非常に難しい舵取りが求められています。 
そこで、本シンポジウムでは、今回の学会テ―マ「その先の、医療へ」につながる「病院経営の質向上と次世代を読む新たな取り組み」をテーマに、社会保障制度改革の行方をみすえ、自院の機能を中長期の視点から根本的に見つめなおし、今打っておくべき布石は何かについて、その方向性を見出し、動き始めた3つの病院から事例発表をしていただきます。 
『2次医療圏の人口減少が想定以上に進むなかで、地域医療連携推進法人制度をいち早く取り入れ、地域医療のあり方をデザインしていく病院』、『公的・私的病院が競合するなか、経営管理の人材育成を行ない、地域住民をも巻き込んだ独特の手法で地域医療を担いだした病院』、『大学病院に次ぐ規模の総合病院の新築移転を機に、更に変革・進化を求めて職員が一丸となって進む組織作りを始めた病院など』、皆さんの参考となる事例発表をお願いしました。 
医療従事者の働き方改革と病院経営は、相反する一面を持ち、この調整には、いずれの病院においてもポイントは、「人」であり、この変革の時に対応できる人材を確保・育成することが、経営においても大きなキーワードとなることは間違いないでしょう。このシンポジウムでの具体的な事例発表や論議が、会場の参加者だけではなく、病院経営に携わる多くの方々の参考となることを期待しております。病院の形態・規模に係わらず、多くのご参加をお待ちしております。

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Fri. Aug 2, 2019 10:00 AM - 11:30 AM 第4会場 (中ホールA)

座長:有賀 徹(独立行政法人労働者健康安全機構 理事長)

 災害拠点病院の指定要件として平成30年度末までに病院BCPの作成を終えることとなっていて、例えば発災から3日間は外部からの支援がなくとも病院機能を維持し重症患者の搬入に対応したり、DMATを受け入れたりすることが求められる。しかし、数日は医材や食料などを備蓄しておいたとしても、いずれは補給が必要になったり、患者を後方に搬送したりと、病院のBCPは病院の所在する地域を面として捉える必要もある。加えて、地割れや土砂崩れなどで道路が寸断されれば、患者の搬出や、自家発電用の重油の補給もままならない。つまり標記のテーマは、社会資本のあり方ナなどを含めて、病々連携や、医療・介護連携、災害拠点病院による全体を俯瞰する活動、地域内の相互扶助ないし外部からの支援、ボランティア活動など一連の、言わば災害レジリエンスとして議論すべきであろう。
 そこで、本シンポジウムにおいては災害時において地域で中核的な役割が期待される災害拠点病院たる日赤病院管理者と、いわゆる地域密着型の中小規模病院群・介護系施設を擁する病院グループの災害対策担当者とに登壇いただき、それぞれに災害への準備と実際の対応策を論じていただく。特に後者においては、中小病院が各々の規模に相応しい被災患者への診療についてのみならず、病院BCPの第一は火災対応であると言われるように、自らの施設が被災した折に患者を避難させる方法について、また施設内にて言わば籠城するにしても食事やトイレなど生活を維持する上での方策についてなどの示説も賜りたい。
 また、被災地域においては被災地JMATや被災地外からのDMATや日赤医療チームなどが支援活動を開始し、それらに続いて被災地外JMATなども避難所に参入することになろう。これらは被災地域からみれば受援となるが、そのような状況に際して、災害対策本部にて各避難所における診療統計について、すなわち疫学的な観点からの諸状況についてほぼリアルタイムで把握する方法論(J-SPEED)が熊本地震のあった平成28年ころから本格化している。これは統一された災害カルテの書式の一部となっている疾病・病態一覧にチェックを入れ、災害対策本部にて日報として集計する方法であり、第3の登壇者は本件の発案者である。それぞれの避難所における診療対象が災害による直接的なものから、日常診療の対象へと漸次移行していく状況を災害対策本部において追跡することにより、亜急性期ないし慢性期における外部からの支援終了の頃合いについての議論が俎上に載る。被災地が、地域における通常の医療提供へと復活を進めるにあたり、外部からの医療支援チームによる医療提供が、地域に従前から存在していた医療提供体制の復活にとって時に阻害要因ともなり得ることから、本方法論はこのような課題解決への糸口となる。加えて、被災地域の病院や施設にとっても、災害対策本部にて得られる避難所の経時的な状況を共有することができれば、地域における医療提供の再開について有機的な連携も可能になるように思われる。J-SPEEDは支援と受援の双方にとって有意義であろう。

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Fri. Aug 2, 2019 1:30 PM - 3:00 PM 第4会場 (中ホールA)

座長:
栗原 正紀(一般社団法人日本病院会 理事/一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 理事長・院長)
浅香 えみ子(獨協医科大学埼玉医療センター 看護副部長)

 医療のあり方は病院単位の構造から地域と連動した構造にシフトし、この医療サービスの受給者のニーズは益々多様化している。この対応は、個々の職種や病院という範囲を超えた対応を必要としている。このような待ったなしの状況に置かれた病院は働き方改革の誘導のもと、いよいよ具体的な策を持つことが迫られている。
「タスクシフティング」つまり、業務の移管と「タスクシェアリング」業務の共同化は、チーム医療のあり方そして医療界における働き方改革に繋がる具体的方策の一つとして注目されてきた。5年後の実施に向けた医師の働き方改革の始動がこれに現実味を与えている。医療を提供する側が疲弊することなく、医療従事者の持つべき本来のプロフェッショナリズムを守り、高める上で期待が寄せられている。
 改革するべき働き方の最重点に長時間労働に対する「時短」があげられる。「時短」は医療者の健康管理を介して医療者自身の健康保持と健康な医療者が支える医療の確保を可能にする。そこには、増大する医療ニーズを前提におくことから、医療の生産性向上の課題に向き合う必要性が生じてくる。医療業務を医療職種間で押しつけ合っていても成果がないことは、これまでのチーム医療のあり方から見えている。すなわち、医療業務の全体量を削減し、成果は維持・向上させる視座をもつ必要性がある。方向性は「患者にとって良いこと」を基軸に無駄を削減し益を生み出すものである。
 ここには、専門職者の特性を加味する必要がありプロフェッショナルリズムの尊重が求められる。現行のチーム医療はこの視点において、個々の特性を強く主張したものであったが、これからのチーム医療は職種の特性から“したいことをする”のではなく“必要とされることをする”協調型のチーム実践が必要となる。プロだからこその守備範囲において、周辺業務であっても対応する働き方へシフトする必要がある。専門性を自らが主張し獲得するのではなく、求めに応じて提供する方向性である。あくまでも「患者にとって良いこと」に繫がることが前提である。それぞれの専門性が個々の患者にとって最良な形にコーディネートされ提供される。専門性は職種間の相互の尊重の中から認知され強化されていく方向性が良いのではないか。そのためには、他職種の専門性を相互に理解することが重要になる。
 このような視座が生産性の高い医療をもたらし、そこに機能するタスクシフティング、タスクシェアリングが医療者の働き方を改革に導くものと考える。そして、新たな職種が加わったにしても専門性の衝突ではなく道が開かれるものと考える。医療の多くが医師の指示のもとに構造化されている中で、医師の働き方を改革することは、医療職者全ての働き方を変えることに繫がる。全ての医療職者の業務を対象にするために、改めて多職種連携のあり方から問い直す。

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Fri. Aug 2, 2019 3:00 PM - 4:30 PM 第4会場 (中ホールA)

座長:木村 厚(社会医療法人社団一成会 木村病院 理事長・院長)

 厚生労働省は2017年に構成し、人生の採取段階における医療の普及・啓発に関する検討会で検討し、人生の最終段階における医療のプロセスに関するガイドラインを見直した。その中でACP(Advance Care Planning)の概念が盛り込まれ、その普及・啓発が検討された。しかしACPとは何か、どうしたらいいのかという具体的な内容は、国民はもとより、医療者もまだよくわかっていないと思われる。
 ACPとは患者さんが将来、自分の考えを伝えられなくなった時に備えて、これから受ける医療や、ケアについて自分の考え、希望を家族や、医療者等に明らかにするよう話し合いをして、文書などに残す手順である。ACPは何度行っても良い。
 そこで今回のシンポジウムでは4人のシンポジストに、それぞれの立場から、現場ではどのように対処しているのか、或いはマスコミの立場からはどのように考えるのかをお話しいただき、その後皆さんで討論したいと考えている。
 シンポジストの斎藤 克子さんはリハビリ病院の医師としての立場から、慢性期病院に入院してからACPを考えるのでなく、普段かかりつけ医にかかっている段階からACPを考えて欲しいという意見である。
 次の宇都宮 宏子さんは訪問看護の立場から、エンドステージになってからの意思決定では遅いこと、患者本院が自分のことを知りながら、準備、心構えができる支援を医療者がすべきだとの意見である。
 更に岡村 紀宏さんはMSWの立場から、ACPは自分の人生について多くの方と話す文化形成の一つと考えること。形成したACPをどのように転院先に伝えてゆくかが大切と述べられる。
 最後に飯野 奈津子さんはNHKという地域の一般住民の立場から、ACPを行うだけでは絵に描いた餅となることが考えられ、医療や介護に留まらない地域ぐるみの支援体制の構築が大切であるといわれる。
 いずれのシンポジストもACPで大事な事は、本人の意思を重視することであり、それをどうやって実現するのかと言う事である。皆様の活発な御議論を待っている。