[IS3-1] 「誰も自殺に追い込まれることのない”生き心地のよい社会”」の実現を目指して
2006年に制定され、2016年に改正された自殺対策基本法の第一条は、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を目指すことを明確に掲げています。自殺対策の基本理念として、第二条では自殺対策を「生きることの包括的な支援」と定義し、保健、医療、福祉、教育、労働など関連する全施策の有機的な連携を通じて、これを総合的に実施する必要があると述べています。また、第十三条において、都道府県及び市町村は地域自殺対策計画を策定することが義務化されており、いのち支える自殺対策推進センターの2023年の調査によると、全都道府県と95%以上の市町村が地域自殺対策計画を策定済みです。一方、2023年における日本の自殺者数は21,837人にのぼり、これは毎日平均60人が自殺で亡くなっている計算です。自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は、日本がG7の中で最も高く、OECD諸国の中でも上位に位置しています。近年は、こどもの自殺が特に深刻で、小中高校生の自殺者数は2000年代の前半から増加傾向にあり、2022年は514人で過去最多、2023年も513人で過去2番目に多くなっています。本講演では、日本における自殺の現状と自殺対策の政策的枠組みについて概観し、自殺対策の最新動向を紹介します。さらに、「誰も自殺に追い込まれることのない”生き心地のよい社会”」の実現に向けて、看護師が果たすべき役割についても考察します。