[KY1-1] 健康危機における看護の真骨頂
~経験を糧に、次のステージへ~
「健康危機」という言葉を聞いたとき、どのようなことをイメージするだろうか。これまでの日本では、地震災害が代表的なものだった。しかし、最近では、地震だけでなく、気候変動に伴う豪雨や台風、雪害など自然現象に由来する災害に加え、新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症、さらには、メンタルヘルスに関連する健康被害、NBC災害*や紛争など、その種別は多様なものになっている。たとえ未知の出来事であったとしても、数々の健康危機に遭遇するごとに、看護は人々の生命と暮らしを守るために役割を果たし、その価値が社会に再認識されてきた。近年を振りかえってみても、東日本大震災や熊本地震などの被災地における看護支援活動が広く評価され、看護協会独自の仕組みであった災害支援ナースが2024年4月より国の制度に位置づいたことは代表的な例である。また、3年以上にわたって新型コロナウイルス感染症と最前線で闘ってきた看護職の処遇改善のための措置が図られたことも、看護に対する社会の期待の高さの表れと言える。多くの健康危機に直面し、また、被害に遭われる人々を目にするたびに、穏やかな生活の大切さとともに、人々の健やかな日常を取り戻し、守るための看護の重要性を痛感する。そして、どのような種類の危機下でも、また、どのようなフェーズにあっても、看護が人々の普遍的なニーズに応え、健康な生活の実現に貢献する看護の使命に変わりはない。一方で、国内外の様々なところで、災害は頻発し、争いも起こっている。種々の感染症との戦いも未だ続いており、想像もつかない新たな健康危機にも備えなければならない。私たち看護職には、これまで培ってきた経験を糧にして、健康危機下においても社会の期待に応え、働きかけ、さらなる専門性を発揮することが求められている。本講演では、過去に直面した健康危機の経験から、看護の活動や成果、課題を振り返るとともに、未来に向けて、これから起こりうる健康危機に対峙する看護職の役割を展望する。*核(Nuclear)、生物(Biological)及び化学(Chemical)によって発生する災害