[口演10-2] 地方クリニックの看護師定着の現状と方策
地域偏在化の人材不足を見据えて
【背景】現在、少子高齢化が急速に進行し、働き手の減少と患者需要の増加が起こっている。同時に、看護師の地域偏在化が進んでおり、地域医療を支えるクリニックでの看護師の確保がますます困難になっている。【目的】自施設のアンケート結果をもとに、看護師不足や離職率の問題を解決するための因子を特定し、看護師の定着を促進すること。【実践内容・方法】自施設の開設後から8年間の離職率推移を算出し、その数値と、毎年期末に30名程度の職員を対象に実施してきた定量的アンケートの数値結果との間で相関係数を求めた。全27項目のアンケートには、離職に繋がる仕事の達成感や給与満足度などの要素が含まれており、離職との因果関係の抽出を試みた。本研究はAクリニックの研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。(承認番号2401)【結果】8年間の平均離職率は7.7%と低いながらも、202X年は11.8%と看護協会が公表している同年の離職率11.6%を上回っていることが分かった。しかし上下する離職率と、給与満足度などのアンケート数値結果は連動しておらず、相関係数は概ね±0.2から±0.3の範囲であり、強い相関関係を示さなかった。【考察】クリニックの離職率とアンケート項目との相関関係の調査では特定の因子が明確にならなかった。要因として考えられるのは、まずクリニックの規模が小さく、従業員数が約30人程度という点である。この規模では、各従業員の特性やニーズの相違の影響がアンケート結果に反映されやすく、バラつきが生じる可能性があることや、これらの因子と実際の離職理由との関連の有無もあげられる。今後の調査や施策においては、従業員のニーズや意見をより詳細に把握するために、アンケート項目の見直しや定期的な面談の実施など、より個別化されたアプローチが必要と考えられる。また、クリニックの規模や地域性などの特性を考慮しながら、従業員の定着を促進するためのさらなる方策を検討することが重要と考える。【実践への示唆】クリニックの規模やアンケート項目の多様性は因子の特定を難しくするが、このように従業員のニーズを把握し、定着を促進する取組みは重要と考える。今後の方策としては、1on1やフィードバックセッションで個別アプローチを導入し、アンケート項目も定期的に見直す必要がある。また、エンゲージメント向上のためにキャリア支援やコミュニケーションを促進し、定期的なフォローアップと従業員からのフィードバックを重視する組織文化を作っていきたい。一方で、アフターコロナでの看護師の価値観の変容も見られているため、これらの方策を定期的に見直すことで変化に対応していくことや、講義を担当している看護学校との連携を密にするなどの新たな人材確保の取組みを進めることが重要と考える。このように、多面的に方策を講じることが、従業員の定着率を向上させ、クリニックの運営を安定化させることを可能にすると考える。