第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演10群 看護職の確保・定着

Fri. Sep 27, 2024 2:15 PM - 3:15 PM 第10会場 (中会議室C1+C2)

座長:吉村 浩美

[口演10-4] 職員が定着する職場環境づくりを目指して

雑賀 貴子, 藤原 のり子 (神戸市立医療センター中央市民病院)

【背景】近年、新型コロナウイルス感染症の長期化や、患者の高齢化、疾病の重症化などにより看護師の労働環境は厳しさを増している。A病院の総離職率は、近年14%台と全国平均離職率より高い水準で経過している。なかでも10年目以下の離職が多く、特に3年目以下が半数近くを占めている。この現状を踏まえ、問題・課題の明確化、定着促進に向け取り組みを開始した。【目的】離職の原因について分析を行い、課題を明確にする【実践内容・方法】202X年度退職者アンケート結果、職員満足度調査結果、時間外勤務内容、師長への聞き取りから離職の原因について分析を行った。また、業務のフロー図を作成し、可視化を行った。発表に関して、個人が特定されないよう十分な倫理的配慮を行い、A病院看護部倫理審査会を受審し承認を得た。【結果】退職者アンケートより、退職理由の上位5項目は、「時間外が多く、ワークライフバランスが保てない」約70%、「業務の煩雑さ」約50%、「雇用条件」約37%、「社風や価値観の違い」約26%、「人間関係」約25%であった。時間外勤務時間は、16.3時間と全国平均と比較しても長く、部署により時間の差が生じていた。時間外勤務の内容は、長い順に「記録時間」「処置・ケア」「業務の引継ぎ」「情報収集」「指導」であった。次に職員満足度調査結果を、フレデリックハーズバーグの二要因理論を使用し分析を行った。結果、満足を生む「動機付け要因」に関しての満足度は高く、不満足を生む「衛生要因」に関する満足度が低かった。特に、「業務量の適切さ」18.6%、「給料」35.6%が低い結果であった。現場の声として業務の煩雑さについて師長に聞き取りを行ったところ、「転棟・搬送などの患者移動」「ケア・処置」「記録」「入退院に関する業務」「指示受け業務」「内服に関する業務」が要因としてあがった。そこで、入退院業務、記録・書類に関する業務、内服業務に関するフロー図を作成した。結果、手順の詳細が見える化でき、記録内容が多いこと、業務内容が複雑化していること、事務作業が多いことがわかった。【考察】取り組み当初は、離職が多い原因が何であり、定着促進に向けての最重要課題が不明確であった。しかし、退職者アンケート分析や、職員満足度調査を二要因理論にて分析した結果、一番の問題は、動機付け要因に関するものではなく、衛生要因の「作業条件」に関する仕事量の多さであることが明確となった。この原因として、記録や直接看護ケア以外の業務の多さ、業務内容自体の複雑さがあり、これらの解決に向け、業務整理・業務の効率化が最重要課題であると考える。【実践への示唆】職員定着に向け、今後さらに業務調査などから詳細な業務内容を分析し、課題に取り組むことで働きやすい職場環境づくりを目指していく。