第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演2群 感染予防対策

Fri. Sep 27, 2024 11:15 AM - 12:15 PM 第7会場 (中会議室B1+B2+B3)

座長:甲斐 美里

[口演2-2] アウトソーシング滅菌供給部門における血液体液曝露リスク分析

報告書からみる現状と課題

安藤 博子 (ワタキューセイモア株式会社)

【緒言】滅菌供給部門(以下、Central Sterile Supply Department:CSSD)は、手術医療に欠かせない重要な部門である。CSSD従事者は血液や体液が付着した器械類を取り扱うため血液体液曝露(以下、曝露)リスクが高い。医療現場における曝露に関する報告は多いがCSSDでの報告は少ない。そこで、曝露事例の現状調査により教育方法についての示唆を得たので報告する。【目的】A社における血液体液曝露報告書(以下、報告書)を分析し、現状を把握することで教育課として取り組むべき課題を見出す。【方法】202X年からの3年間に受託施設約250施設のCSSDで発生した曝露事例について、EPINetTM(エピネット)を基に作成された職業感染制御研究会発行のエピネット日本版Version5.0に沿ってExcelによる単純集計を行い経験年数、発生時間、原因器材、発生状況等を整理・分析した。倫理的配慮:曝露報告書を使用するため、個人を識別できる内容を含むことから個人を特定できないよう配慮した。本研究は、A社の倫理審査委員会相当の機関にて承認を得た(承認番号A-202301)。【結果】報告された曝露事例130例を針刺・切創、皮膚・粘膜曝露別に分類した。針創・切創128例、皮膚・粘膜曝露2例であった。針刺・切創では、対象者の経験年数は、1年未満35.2%、1年~3年目37.5%、4~6年目14.8%、7~9年目7.0%、10年目以上が5.5%であった。発生時間は、11時~13時24.6%、14時~16時が36.9%と多く約6割を占めていた。原因器材において、針創で多かったのは、先端が鋭利な鑷子・鉗子19.2%、切創で多かったのは、はさみ36%であった。発生状況では、仕分8.5%、器械カウント14.6%、洗浄時61.5%と洗浄時が一番多かった。皮膚・粘膜曝露の2例は経験年数1年未満と10年以上、発生時間は、11時台と15時台で、体液の種類は痰と血液であった。発生状況は洗浄時に防護していなかったことによる眼粘膜への曝露であった。【考察】曝露したCSSD従事者は、経験年数が1年未満と1年~3年目が多いことから入社時の教育体制を整える必要性が明確となった。今まで、社員看護師による「職業感染対策」の教育機会はあったが不定期開催のため、習得した知識や危機管理の意識が持続していない可能性がある。そのため、新人、現場で指導を行う中堅者、現場責任者に分けた定期的で段階的な教育が必要であると考える。しかし、CSSD従事者は時間雇用者(パートタイマー)も多く、比較的短期間で転職する傾向があることから、曝露を防止するためには、より効果的かつ短時間で容易に理解できる業務手順の考案も不可欠であると考える。【結論】本研究により、CSSD従事者が安全かつ、安心して業務を行うためには、就業時に予防対策実習の導入や、経験年数別業務手順の作成など教育体制を確立し、曝露防止に取り組む必要性があることが明らかになった。