第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

口演

口演2群 感染予防対策

2024年9月27日(金) 11:15 〜 12:15 第7会場 (中会議室B1+B2+B3)

座長:甲斐 美里

[口演2-3] 中規模精神科病院における感染対策の構築

藤田 美代子1, 栗原 良子2 (1.栄聖仁会病院, 2.湘南医療大学)

【背景】A病院は106床の精神科単科病院である。精神科病院の感染対策では標準予防策を実施することが難しく、感染拡大リスクの高さが指摘されている。筆者は看護部長として新型コロナ感染症第7派の時期に就任した。A病院でもクラスターが発生していたが、感染対策マニュアルは未整備で、PPE装着等の予防策も不十分であった。また、管理者は3病棟に1名の看護師長のみ、看護師の勤続年数も3年未満が多数という状況であった。看護部を統括し感染対策の体制作り及び教育が喫緊の課題であると考えた。【目的】中規模精神科病院の感染対策に関する管理体制および教育体制を構築する。【実施内容・方法】1.個人面談:看護職員51名(看護師19名、准看護師11名、看護補助者21名)に実施、2.病棟巡回:毎日看護部長が3病棟を巡回、感染予防の状況確認と個別指導実施、3.感染対策マニュアル:新型コロナウイルス感染症の項目追加、既存内容の改定、4.教育体制:eラーニング導入、5.管理体制:3病棟に看護主任を各1名配置。本実践報告に関しA施設倫理委員会の承認を得た。【結果】個人面談の結果、医療安全や不足備品等に関する要望があり順次環境を整備した。病棟巡回では、PPE装着等の確認と指導を徹底した。さらに、感染管理の院内ラウンドを月1回から週1回とし感染管理体制を徹底した。感染マニュアル内容の改定等を行い職員全員に周知した。これらにより、感染予防対策が徹底し、コロナ陽性患者2名確認後のクラスター発生はない。教育ではeラーニングを導入し、看護部職員がいつでも学習できる体制を整備した。また、3病棟に主任を配置し管理体制を整備した。以上の結果、看護職員の離職率が202X年度22%から202Y年度14%、特に看護師の離職率は37%から13%になった。【考察】精神科病院の看護配置は一般病棟より少ない。さらに、A病院では看護師の勤続年数3年未満が8割、師長は3病棟に1名のみと、感染予防に対する管理体制が不十分であった。そのため、現状把握と対策立案のために個人面談と病棟巡回を行った。巡回時のOJTにより看護職員の感染予防への意識が高まり、確実なPPE装着や感染マニュアル確認等、日々の行動変容がクラスターの終息に繋がったと考える。また、自己研鑽と知識の定着を図るためe-ラーニングを導入した。各病棟に看護主任を配置し感染管理及び教育体制を支援した。横山らは新型コロナ感染症の対応について、「誰も経験したことのない業務にスタッフを従事させる場合、組織や上司からの安定した支援は必要不可欠なものと言える。」と述べている。今回看護部として行った一連の体制整備が看護職員の就業意欲に繋がり離職率が低下したと考える。【実践への示唆】新型コロナ感染症への感染対策を見直すことができた。この成果を継続していくためには、平時における感染予防策が重要である。今後も院内感染チームの活動強化と人材の育成を図っていく必要がある。