[口演2-4] 使い捨てウェットタオルによる陰部清拭と陰部洗浄の比較検証
汚染曝露の観点より
【背景】A病院では数年前より陰部洗浄(以下洗浄)と陰部清拭(以下清拭)の洗浄度に差はないとして清拭が推奨されている。しかし、現在でも洗浄が主流となっている。【目的】洗浄と清拭の陰部ケア方法の違いによる看護師・患者・環境の汚染曝露状況を明らかにする。【実践内容・方法】1. 方法1)共通の使用物品は、使い捨てウェットタオル、蛍光塗料入り模擬便90g、防護服、トイレットペーパー、ゴミ袋とし、洗浄では微温湯ボトル・泡石鹸も用いた。2)院内の看護手順で統一して実施した。3)陰部モデルを用いて5人の看護師(右利き)で患者のベッドの右側に立ち、洗浄と清拭を実施した。4)先行文献を参考に検証部位(看護師9箇所:頭部~頸部・胸部・腹部・各左右上腕・各左右前腕・各左右手、患者6箇所:各左右腹部、各左右大腿内側・各左右大腿外側、環境6箇所:各左右シーツ、各左右ベッド柵、各左右床)を設定し、14例のケアを行った(1人につき複数回施行)。5)汚染の有無は、蛍光塗料を汚染とみなしブラックライトを使用して光線をあてた。検証部位に1箇所以上光線が確認された場合は汚染あり、光線が確認されない場合は汚染なしと判定した。2. 検証洗浄と清拭それぞれにおける看護師・患者・環境の汚染状況について単純集計を行った後、洗浄と清拭で汚染状況に違いがあるかを検討するためマクネマー検定を行った。統計解析はEZRを用いて行った。【結果】洗浄・清拭ともに看護師は、右手、左右前腕では14例(100%)蛍光塗料の汚染を認め、右上腕は洗浄3例(21%)に対し清拭は1例(7%)、腹部は洗浄5例(36%)に対し清拭は2例(14%)であった。患者汚染では、左大腿外側は洗浄8例(57%)に対し清拭は1例(7%)であった。 環境汚染では、右シーツは洗浄13例(93%)に対し清拭は0例(0%)、左シーツは洗浄13例(93%)に対し清拭は1例(7%)、右ベッド柵は洗浄6例(43%)に対し清拭0例(0%)であった。看護師では、洗浄・清拭で有意な差がある汚染箇所はみられなかった。一方、患者では左大腿外側において有意差があり(P=.002)洗浄でより汚染が認められた。さらに、環境では、右シーツ(P=.005)、左シーツ(P=.001)、右ベッド柵(P=.001)において有意差があり、患者と同様に洗浄でより汚染が認められた。【考察】洗浄では微温湯を使用するため曝露が広範囲であることは予測できたが、汚染部位に有意差が得られたことで、曝露リスクのある部位が明確になったと考える。洗浄より清拭の方が看護師・環境・患者への汚染範囲や割合が低かったため、感染性胃腸炎などの際には清拭で陰部ケアを行うことで交差感染リスクが軽減できると考える。【実践への示唆】数値化した結果は、病棟・院内全体の陰部ケア方法を見直すきっかけになると考える。今後も得られたデータより、環境からの交差感染の成立や曝露状況を伝えスタッフの感染予防に対する意識を高めていきたい。